時計の時間計測で標高を算出する技術

surfer

13時間前

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腕時計（スマートウォッチなど）で「時刻計測だけを使って」高度を出しているように見えるのは、実は衛星測位システム（GNSS）による“電波の伝搬時間”を利用した三次元測位の延長にすぎません。簡単に仕組みをまとめると以下のようになります。

1. 衛星側で高精度に時刻を刻んだ電波を送信
・GPS、GLONASS、Galileoなど、位置が厳密に管理された複数の衛星がそれぞれ「今この瞬間、こういう時刻です」というタイムスタンプを電波に載せて地上へ発信。
・衛星には原子時計が積まれており、ナノ秒オーダーの正確さで時刻を維持しています。

2. 腕時計側で受信時刻を測定
・腕時計内部にはクォーツやルビジウムクロック（高級機種ではさらに安定度の高い素子）を載せ、衛星電波をキャッチした瞬間の自前クロック時刻を記録。
・衛星送信時刻との差分（＝電波の往復時間に大気やマルチパスなどのズレを許す「疑似距離」）を算出します。

3. 疑似距離から三次元座標を求める
・地上にいる受信機（腕時計）の位置を(x,y,z)、受信機クロックのズレをΔtとすると、衛星i（位置(xi, yi, zi)・送信時刻ti）が送った信号を受け取る時刻t受→
√[(x–xi)²+(y–yi)²+(z–zi)²] ≃ c·(t受–ti–Δt)
・この式を異なる4基以上の衛星について立て、連立方程式を解くことで(x, y, z)とΔtを一挙に求められます。
・得られたz座標がそのまま高度です（ジオイド面や楕円体面との対応はソフト側で変換）。

──この「電波の伝搬時間をナノ秒単位で測る」テクノロジーこそが、まさに“時計の時刻計測で高度を割り出す”仕組みと言えます。

【精度向上の工夫】
・マルチバンド／マルチGNSS受信で電離層遅延を低減
・SBAS（補強システム）やDGPSで基準局から誤差補正情報を取得
・内蔵の気圧センサー（バロメータ）と組み合わせ、変動の激しい一時的な誤差を平滑化

【将来技術の一例：クロノメトリー測地学】
近年、光格子時計の10⁻¹⁸オーダーという超高精度を使い、重力ポテンシャル差（高度差）に応じたわずかな「時計の進みの違い」を直接測る研究（chronometric leveling）が進んでいます。これが実用化すれば、電波を使わずとも“時空の歪み”をとらえて数センチの高度差を測る…なんて未来も遠くないかもしれません。