気仙沼市中心部直下の震度7級地震と、火山・海底火山噴火が重なる仮想複合災害の想定レポート
本レポートは公的な被害想定ではなく、公開されている各種津波浸水想定や過去の災害実績データを参照し、筆者の仮定に基づいて作成した仮想の推計シナリオです。数値の幅は大きく不確実性を伴います。
0. 前提と注意事項
- これは公的な被害想定ではなく、公表されている津波浸水想定や過去の震災の実績を参考にした、筆者の仮定にもとづく推計シナリオです。数値の幅は大きく、不確実性があります。
- 現実には、気仙沼市の周辺に津波や降灰で市域を直撃するような活火山はありません。そのため「火山噴火」は、内陸の栗駒山(宮城・岩手・秋田県境、市中心部から約50〜60km)と、三陸沖の海底火山という仮定の設定です。三陸沖で確立した大規模な海底火山の想定は、公的には存在しません。
- 公開情報では、宮城県の日本海溝・千島海溝沿い最大クラスの津波想定で、気仙沼市の最大沿岸津波高は15.4mと推計されています。代表地点の津波到達時刻は、+30cmで26分、+1mで35分、第1波(4.5m)で52分です。この想定では気仙沼市役所は浸水なしとされています。ただし、地形データと計算モデルにもとづく推計で、不確実性を伴います。
- 宮城県は第五次地震被害想定調査を実施しており、地震動・津波・液状化・人的・建物・経済被害を予測して防災の基礎資料としています。
- 2011年の東北地方太平洋沖地震では、死者19,418名、不明2,592名で、死者の90%以上が水死でした。巨大津波が被害の主因です。
- 本レポートの人的被害・経済被害の数値は、上記の公表値や2011年の実績をふまえた筆者の概算です。公的数値と混同しないでください。
1. 想定シナリオの設定
1-1. 発生条件
- 発生時期は1月中旬の平日、午後6時ごろ(日没後・気温0度前後・北西の強風)です。夜間と冬は避難に不利で、人的被害が大きくなりやすい条件です。
- 第1事象は、気仙沼市中心部(南気仙沼・魚市場周辺〜市街地)直下の浅い地殻内地震(M7.6程度)です。市中心部で震度7、周辺の広い範囲で震度6強〜6弱となります。
- 第2事象は、この地震に誘発されたプレート境界(日本海溝側)のM8.8〜9級の連動破壊です。数分〜十数分以内に起こり、広域の強い揺れが数分間続きます。
- 第3事象は栗駒山の噴火です。地震の約6〜12時間後に、水蒸気噴火から小規模なマグマ噴火へ移行する想定で、市域への降灰は薄い(0.5〜数cm)ものの、広域の交通・農業・通信に影響が出ます。
- 第4事象は三陸沖の海底火山噴火(仮定)です。地震の数時間〜1日後に沖合約60〜100kmで起こり、軽石の漂流・漂着と、噴火に伴う局地的な津波(市沿岸で2〜5m程度)を発生させます。
1-2. 気仙沼市の基礎データ(概数)
- 人口は約5.5〜6万人、世帯数は約2.3万世帯です。高齢化率は約38〜40%で、全国平均より高い水準です。
- 地形はリアス海岸(気仙沼湾・大島・唐桑半島・本吉の海岸)で、平地が少なく、市街地・港湾・水産加工団地が海岸の低地に集中しています。
- 主要産業は、水産業(遠洋・近海漁業、水揚げ、冷凍・水産加工、造船・舶用機械)と観光、そして農林業です。
- 主要インフラは、気仙沼港・魚市場、国道45号、三陸沿岸道路(復興道路)、JR大船渡線BRT、気仙沼大島大橋、市立病院、気仙沼湾沿いの石油タンク・冷凍冷蔵施設です。
- 2011年の被災経験があり、防潮堤・かさ上げ・高台移転が進んでいます。ただし、地震の揺れそのもので損傷した場合は、想定どおり機能しない可能性があります。
2. 災害の時系列(発災から復旧まで)
| 経過時間 | 主な出来事 |
|---|---|
| 0分 | 直下型地震発生。震度7。建物倒壊・斜面崩壊・停電・通信輻輳 |
| 0〜3分 | 強い揺れが継続し、プレート境界の連動破壊が始まる。漁港の岸壁・護岸が損傷 |
| 約5〜15分 | 湾内の引き波・局地的な津波の第一報。防災無線・サイレンも停電や損傷で不全の恐れ |
| 約26分 | 最大クラス想定では+30cmの津波が到達。以降急速に水位上昇 |
| 約35〜52分 | +1m到達、第1波(約4.5m)到達。その後、複数波が続く |
| 1〜3時間 | 最大波(最大クラス15.4m級)。湾奥・低地が広域浸水。漁船・車両・瓦礫が市街地へ流入 |
| 2〜6時間 | 火災が拡大。燃料タンク・漂流物火災・住宅火災が津波浸水域で発生 |
| 6〜12時間後 | 栗駒山噴火。降灰・空振・火山性地震。航空・道路が影響を受ける |
| 数時間〜1日後 | 三陸沖海底噴火(仮定)。局地津波と軽石の漂流が始まる |
| 1〜3日 | 孤立集落の発生、避難所の過密、低体温症、救助活動の遅れ |
| 3〜7日 | 水・食料・燃料・医療の不足、遺体安置・身元確認の逼迫 |
| 1か月〜 | 仮設住宅、水産業の再開、瓦礫・降灰処理、心のケア |
| 1〜5年 | 港湾・水産加工の再建、人口流出、地域経済の再編 |
3. 地震動による被害
3-1. 震度分布の想定
- 市中心部は震度7、半島部・沿岸部は震度6強〜7、内陸の本吉・津谷方面は震度6強〜6弱と想定します。
- 揺れは、直下型の短周期成分による建物被害と、プレート境界地震の長周期・長時間の揺れによる液状化・斜面崩壊・長周期被害が重なります。
3-2. 建物被害(概算)
- 揺れ単独による全壊は約3,500〜6,000棟、半壊は約8,000〜12,000棟と想定します。旧耐震基準(1981年以前)の木造住宅、商店街の古い建物、老朽化した水産加工場が中心です。
- 冬の夕方で暖房・調理が多く、火災が出やすい時間帯です。出火件数は市域で数十件の恐れがあります。
- 津波との重複を除いた最終的な建物被害は、全壊・流失あわせて約9,000〜14,000棟(市内建物の3割前後)と見ています。
3-3. 液状化・斜面災害
- 埋立地・港湾・水産加工団地・河口低地(南気仙沼・鹿折・松岩・魚町周辺)で液状化が起き、岸壁・護岸・道路・地下埋設管が損傷します。
- 急傾斜地・山地部で土砂崩れが発生します。国道45号・県道・復興道路の接続道路が寸断され、複数の集落が孤立します。冬季の凍結・積雪が復旧を難しくします。
- 地震前に降雪があれば、融雪水による緩んだ斜面の崩壊リスクも加わります。
3-4. 火災
- 津波浸水域では、倒壊建物・燃料タンク・漂流する船舶や車両から出火する恐れがあります。2011年にも気仙沼湾で重油流出と湾内火災が起きました。
- 消防力は、道路寸断・断水・津波による車両損失で大きく低下します。火災の延焼面積は、住宅・事業所を含め、数十〜数百haの規模になる恐れがあります。
- 湾内への油流出と火災は、漁業再開を大きく遅らせます。
4. 津波の想定
4-1. 最大クラスの津波(公表想定の整理)
- 気仙沼市の最大沿岸津波高は15.4mです。+30cmの到達は26分、+1mは35分、第1波(4.5m)は52分と推計されています。
- この到達時間は、揺れの発生から避難開始までの時間が短いことを意味します。直下型地震で建物倒壊・道路寸断が起きると、実質的に避難に使える時間はさらに短くなります。
- 公表想定では市役所は浸水しないとされていますが、直下型の揺れによる庁舎の損傷・停電・通信障害のため、行政機能が停止する恐れがあります。
4-2. 本シナリオの津波
- 第1の波は、プレート境界地震による津波です。最大クラス15.4m級が湾奥・半島の入り江に集中し、市域では遡上高が20m級に達する局所が出る恐れがあります。
- 第2の波は、断層の変位に伴う地盤沈降(地殻変動)により、岸壁・防潮堤・低地の浸水が拡大して起こる被害です。大潮の満潮と重なれば、さらに悪化します。
- 第3の波は、海底火山噴火(仮定)の局地津波です。2〜5m程度で、すでに破壊された沿岸部の復旧・救助を妨げます。
- 沿岸部では、津波は複数回、数時間〜半日にわたって繰り返し来襲します。そのため、第1波のあとで自宅へ戻った人が被害に遭う危険があります。
4-3. 浸水域と影響
- 浸水面積は、市内の低地・港湾・河口部を中心に約25〜35km²(2011年の浸水域を上回る可能性)と想定します。
- 魚市場、水産加工団地、造船所、冷蔵倉庫、市街地の商業地、鉄道・BRT、主要道路が浸水します。
- 津波による漂流物(漁船・コンテナ・車両・瓦礫・流木)が、湾内で連鎖的な被害を生みます。漁船数百隻が流失・損傷する恐れがあります。
- 大島では、橋(気仙沼大島大橋)が損傷すれば離島状態になり、医療・物資搬入が止まります。フェリーも使えない場合、孤立がさらに長引きます。
5. 火山噴火・海底火山噴火の影響
5-1. 栗駒山の噴火(仮定)
- 噴火規模は中規模(VEI 3程度)で、冬季の北西風が主流であれば、降灰は東〜南東側に流れます。気仙沼市は風向次第で0.5〜3cm程度の降灰です。
- 降灰の影響は次のとおりです。
- 道路:視界不良とスリップで通行が困難になります。
- 電力:碍子への付着による停電が起きます。
- 通信:基地局の障害や、降灰による機器の不具合が起きます。
- 水道:浄水場の濁度が上がります。
- 農業・漁業:養殖施設・養殖いかだへの影響が懸念されます。
- 健康:呼吸器障害と目の障害が起きます。
- 積雪や雨を含む場合は、降灰が重くなって屋根に載り、すでに傷んだ建物の倒壊リスクが高まります。
- 融雪型火山泥流は、栗駒山の山麓に近い河川(迫川・磐井川方面)が主な影響範囲です。気仙沼市への直接の被害は限定的ですが、周辺自治体からの支援・物流が阻害されます。
5-2. 海底火山噴火(仮定)
- 三陸沖の海底噴火は、現実には想定されていないシナリオです。地震・津波と同時期に起こる、極端な追加リスクとして扱います。
- 影響は次のとおりです。
- 局地津波(2〜5m)。
- 軽石の漂流・漂着(漁港・養殖施設・船舶の取水口を閉塞)。
- 海水面の変色・有毒ガス・海況の悪化。
- 軽石は、気仙沼湾内の船舶の機関停止、養殖ホタテ・カキ・ワカメの被害、漁港の閉鎖を引き起こします。2021年の福徳岡ノ場噴火の際、沖縄などで軽石被害が長期化した例が参考になります。
6. 人的被害の想定
6-1. 死者・行方不明者
人口約5.5〜6万人に対する推計です。
| 原因 | 死者・行方不明者(概算) |
|---|---|
| 津波による溺死 | 約2,000〜4,500人 |
| 建物倒壊による圧死・窒息 | 約500〜1,200人 |
| 火災 | 約200〜600人 |
| 斜面崩壊・土砂災害 | 約50〜150人 |
| 低体温症・避難生活中の悪化など(直接死) | 約100〜400人 |
| 降灰・二次災害など | 数十人 |
| 合計(中央値) | 約4,800人(幅:約2,800〜8,000人) |
- 災害関連死は、発災後1〜2年で約300〜1,200人上積みされる恐れがあります。慢性疾患の悪化、避難所生活、医療アクセスの途絶、孤立による持病悪化などが原因です。
- 2011年の市内の犠牲者は、市の公表では行方不明者を含めて約1,400人規模でした(概数)。本シナリオは、直下型の強震動と、夜間・冬季・津波到達の早さが重なるため、これをかなり上回る想定です。
6-2. 負傷者・要救助者
- 負傷者は約8,000〜15,000人で、重傷者は約1,500〜3,000人と想定します。
- 要救助者(倒壊建物の下敷き・孤立・津波からの避難困難)は、約5,000〜9,000人に達する恐れがあります。
- 孤立地区(半島部・大島)での救助は、道路寸断とヘリコプター・船舶の運用条件(強風・降灰・波高)に左右されます。
6-3. 避難者
- 発災直後の避難者は約4〜5万人(人口の7〜8割)です。
- 1週間後は約3〜4万人、1か月後は約2〜3万人で、そのうち仮設住宅・みなし仮設への移行者が増えます。
- 冬季のため、避難所の寒さ対策(暖房・毛布・燃料)が生死を分けます。
- 要配慮者(高齢者・障害者・乳幼児・外国人漁業従事者など)への対応が、大きな課題となります。気仙沼は外国人技能実習生・外国人船員が多い地域でもあります。
7. ライフライン・インフラ
7-1. 停電・通信
- 停電は、発災直後に約2.2万〜2.5万戸(ほぼ全域)で起こります。復旧は、1週間で6〜7割、1か月でほぼ完了と見ます。津波被災域は別途、再建を必要とします。
- 携帯・固定通信は、基地局の倒壊・停電・光ケーブルの断線で数日〜数週間不通になる地域が出ます。
- 防災行政無線の機能低下が、津波警報の伝達を阻害します。衛星通信・車載基地局の確保が鍵となります。
7-2. 上水道・下水道
- 断水は、約2万戸以上で起こります。復旧は、市街地で1〜2か月、被災の大きい地区は3か月以上を要する恐れがあります。
- 下水処理場が沿岸にある場合、津波と液状化で機能停止します。トイレ不足と衛生悪化が大きな課題です。
7-3. ガス・燃料
- LPガス容器の転倒・流出と、都市ガス設備の損傷が起きます。
- 港湾の石油タンクが損傷すると、燃料の不足と火災リスクが高まります。2011年に燃料不足が復旧を遅らせた教訓があります。
- 冬季の暖房用灯油が不足すると、低体温症のリスクが増します。
7-4. 交通・物流
- 道路は、国道45号・三陸沿岸道路・県道が、斜面崩壊・橋梁損傷・浸水で寸断されます。
- 啓開(道路の瓦礫除去)に要する期間は、主要幹線で数日〜2週間、孤立集落の道路で1か月以上の恐れがあります。
- BRT・鉄道は、地震と津波で長期にわたり不通となります。
- 港湾は、岸壁の沈下・損傷と湾内の漂流物で使用不能になります。航路啓開(海底の瓦礫除去)に、数週間〜数か月を要する恐れがあります。
- 空路は、近隣の空港や臨時ヘリポートが救援の窓口になりますが、降灰時は運航が制限されます。
8. 医療・福祉・行政機能
8-1. 医療
- 市立病院や主な医療機関が、津波・停電・断水・建物損傷で機能不全になる恐れがあります。
- 負傷者が数千人規模で出るのに対し、重症者を受け入れられる病床は限られています。
- 透析・在宅酸素・インスリン・人工呼吸器の患者への対応が急務となります。
- 広域搬送(ドクターヘリ、自衛隊、海上保安庁のヘリ)への依存度が高くなりますが、降灰・天候・夜間条件が制約となります。
- 感染症(インフルエンザ・ノロウイルス・肺炎)が、避難所で拡大しやすくなります。
8-2. 行政・防災機能
- 庁舎・消防・警察・消防団員の被災で、初動が遅れます。
- 職員自身の被災・津波犠牲が出て、行政機能の再開が遅れます。
- 遺体の収容・安置・身元確認が、数千人規模で追いつかない恐れがあります。火葬能力の不足から、広域火葬が必要になります。
9. 経済被害・経済損失
9-1. 直接被害(資産の損傷)
数値は筆者による概算です。
| 項目 | 被害額(概算) |
|---|---|
| 住宅・建物 | 約4,000〜6,500億円 |
| 水産業関連(魚市場・加工・冷蔵・造船・漁船・養殖施設) | 約3,000〜5,000億円 |
| 商工業(店舗・事業所・設備・在庫) | 約1,500〜2,500億円 |
| 公共土木・港湾・漁港・道路・橋梁・防潮堤 | 約2,500〜4,000億円 |
| ライフライン(電力・水道・通信・ガス) | 約600〜1,200億円 |
| 農林・その他 | 約200〜500億円 |
| 合計 | 約1.2兆〜1.9兆円 |
- 市の経済規模(市内総生産は数千億円規模)に比べて、直接被害額は極めて大きく、市の経済力のおよそ数倍に相当します。
- 2011年の東日本大震災での気仙沼市の被害は、公的な推計で数千億円規模とされています(正確な数値は市の発表をご確認ください)。本シナリオは、それを上回る水準の仮定です。
9-2. 間接損失(生産・販売の停止、復興遅延)
- 水産業は、気仙沼市の経済を支えています。魚市場の水揚げ(概数で年間約200億円前後)や、水産加工(缶詰・冷凍・かまぼこ・フカヒレなど)、造船・舶用機械の停止が長期化します。
- 漁船の流失、漁港の損壊、養殖施設の損壊、軽石の漂着、油流出が重なり、水揚げが震災前の水準に戻るまでに3〜7年を要する恐れがあります。
- 観光は、被災の長期化と風評・交通の寸断で、通常の4〜5割程度に落ち込みます。
- 5年累計の間接損失は、約1.0〜2.0兆円と見ます。
- 直接被害と間接損失を合わせた5年累計の経済損失は、約2.5〜4兆円と推計します。
9-3. 広域経済への波及
- 気仙沼の水産物は、全国の飲食店・小売・加工業者への供給に影響します。
- カツオ・サンマ・メカジキ・サメなどの水揚げ・加工が止まれば、価格上昇や供給不足が広域で起こります。
- 三陸沿岸道路・港湾・鉄道の被災で、東北沿岸全体の物流が停滞します。
- 栗駒山の降灰は、東北内陸の農業(米・畜産)、航空・陸上交通へ追加の損失をもたらします。
9-4. 財政・雇用・金融
- 市の財政は、復旧事業の負担、税収減、人口減少で急速に悪化します。国の災害対応(激甚災害指定・特別交付税・復興特別措置)が不可欠です。
- 事業者の廃業が増え、雇用が失われます。再建には、グループ補助金や融資、二重ローン対策などの制度が鍵となります。
- 地震保険・漁業共済・損害保険は、支払額が膨らむため、保険会社の対応力も問われます。
10. その他の重大な影響
10-1. 環境・衛生
- 津波瓦礫・漁具・船舶の解体物・降灰の処理は、数百万トン規模になる恐れがあります。
- 油や化学物質の流出が、湾内の水質・底質・養殖環境に長期影響を及ぼします。
- 腐敗した魚介類・冷凍庫の在庫の流出による悪臭、害虫・ネズミの増加など、衛生環境が悪化します。
- 水産加工場からのアンモニア冷媒漏出など、化学災害にも注意が必要です。
10-2. 人口・コミュニティ
- 人口は、死者・負傷・転出により、5年で2〜3割以上減る恐れがあります。若年層・子育て世代が先に流出し、高齢化がさらに進みます。
- 避難所生活・仮設住宅が長期化すると、地域のつながりが失われやすく、孤立・孤独死やアルコール依存・うつ・PTSDなどの問題が出ます。
- 子どもの学びの場(学校・通学路)の再建が、地域の再生に重要です。
10-3. 教育・文化
- 学校施設の損壊や避難所利用で、授業再開が遅れます。
- 神社仏閣・祭り・漁師文化・食文化(フカヒレ・生鮮カツオ・サンマなど)が失われる危機があります。
10-4. 風評・情報
- 海洋汚染や軽石漂着、油流出が、気仙沼産水産物の風評被害を招く恐れがあります。
- 偽情報(デマ)が、混乱の中で拡散しやすくなります。正確な情報発信の仕組みが重要です。
10-5. 気象・季節要因
- 冬季の低温と降雪・降灰が重なると、低体温症と屋根荷重が大きなリスクです。
- 夜間の津波避難は、視界不良と停電で混乱します。避難経路の照明・誘導が重要です。
11. 被害を拡大させる要因と軽減できる要因
11-1. 拡大要因
- 直下型地震の揺れで、避難行動が阻害されること。
- 津波の到達が早く、避難に使える時間が短いこと。
- 高齢化率が高く、避難困難者が多いこと。
- 夜間・冬季であること。
- 低地に市街地・産業が集中していること。
- 複合災害により、救援の空路・陸路・海路が同時に制約されること。
- 防潮堤・水門が、揺れや液状化で機能しない可能性があること。
11-2. 軽減要因
- 2011年の経験があり、住民の津波への意識が高いこと。
- かさ上げ・高台移転、避難路・避難タワーなどの整備が進んでいること。
- 三陸沿岸道路(復興道路)という広域幹線があること。
- 自衛隊・海上保安庁・緊急消防援助隊・DMAT・DWATなどの広域支援体制があること。
- 津波警報・緊急地震速報・防災無線の整備があること。
12. 減災・対策の提案
12-1. 個人・家庭ができること
- 「揺れたら高台へ」を徹底する。津波警報を待たずに逃げることが基本です。
- 家具の固定・耐震診断・耐震改修を進める。
- 非常持ち出し袋(防寒具・常備薬・携帯トイレ・モバイルバッテリー・ラジオ)を備える。
- 家族で避難場所・連絡方法を決めておく。
- 冬の夜間を想定して、懐中電灯・毛布・カイロを準備する。
- 降灰に備えて、マスク・ゴーグル・雨具・飲料水を準備する。
12-2. 地域・自治体ができること
- 避難路・避難場所の定期点検と、夜間・冬季の避難訓練。
- 要配慮者の個別避難計画の作成。
- 避難所の暖房・電源・食料・トイレの備蓄(冬季対応)。
- 漁船・漁具・水産施設の事前の避難計画と、BCP(事業継続計画)の整備。
- 孤立集落・大島への、ヘリ・船舶・衛星通信を使った支援計画。
- 火災対策(石油タンクの安全化、消防水利の多重化)。
- 降灰・軽石対策の訓練と、除灰・除去の体制づくり。
- 広域連携(周辺自治体・県・国・民間)の事前協定。
12-3. 企業・産業ができること
- 水産加工・冷蔵施設の高台移転・分散化。
- 非常用電源・燃料の確保。
- データのバックアップとサプライチェーンの複線化。
- 従業員の避難計画と、安否確認の仕組み。
- 保険・共済・資金調達の事前検討。
13. 復旧・復興の見通し
| 時期 | 主な状況 |
|---|---|
| 発災〜1週間 | 救助・救命、避難所運営、遺体対応、道路啓開、通信・電力の応急復旧 |
| 1週間〜1か月 | 仮設住宅の着工、物資・燃料・医療の安定、瓦礫・降灰の処理開始 |
| 1〜6か月 | 水道・下水の復旧、仮設店舗・仮設工場、漁港の暫定再開、学校再開 |
| 6か月〜1年 | 災害公営住宅・高台移転の計画、港湾・魚市場の仮復旧、漁業再開 |
| 1〜3年 | 水産加工・造船の再建、人口流出への対策、復興計画の本格実施 |
| 3〜5年 | 港湾・産業の再建、観光再生、心のケアの継続 |
| 5〜10年 | 都市の再構築と、地域の持続可能性の確保。人口構造の変化への適応 |
- 復興には、国の財政支援(復興特別会計・補助金・交付税)が不可欠です。
- 復興計画では、「元に戻す」だけでなく、将来の津波・人口減少・産業構造の変化を見据えた設計が必要です。
14. 本シナリオの不確実性と限界
- 火山噴火・海底火山噴火は、気仙沼周辺の公式な想定にはない仮定です。実際のリスクとは区別してください。
- 地震・津波の規模、発生時刻、季節、風向、潮位、避難行動によって、被害は大きく変わります。人的被害は、避難率や避難開始の早さで、数分の1にも、数倍にもなりえます。
- 経済被害は、為替・物価・復旧方法・国の支援策によって変わります。
- 気仙沼市の最大津波高15.4mや到達時刻などは、公表の想定値にもとづいていますが、実際の津波は、地形・潮位・断層運動によって異なります。
- 実際の防災・避難に役立てる際は、宮城県・気仙沼市のハザードマップ、第五次地震被害想定調査、地域防災Webなどの公式情報を、必ずご確認ください。
15. まとめ
- 気仙沼市中心部の直下で震度7級の地震が起き、さらに最大クラスの津波と火山・海底火山の噴火が重なれば、人的・経済的被害は2011年を上回る恐れがあります。
- 本シナリオの概算では、死者・行方不明者は約4,800人(幅2,800〜8,000人)、全壊・流失建物は約9,000〜14,000棟、直接被害は約1.2〜1.9兆円、5年累計の経済損失は約2.5〜4兆円です。
- 最大の被害要因は、津波と火災、そして冬の夜間という条件の重なりです。一方で、「揺れたらすぐ高台へ」という行動と、事前の備えで、被害を大きく減らせます。
- 水産業が地域経済の中心であるため、漁港・魚市場・加工・造船の早期再建が、復興の鍵となります。
防災関連情報
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