防災 最新(2026.08.21)震源被害想定 震度7以上 高知県高知市の中心地を震源とする震度7以上の大地震発生時の被害想定
高知県高知市中心地を震源とする震度7以上の大地震 想定レポート
1. はじめに:想定の位置付け
本レポートは、高知県高知市の中心市街地付近を震源とする、震度7以上の強い揺れを伴う浅い内陸直下型地震を仮定し、人的・物的・経済的な影響を整理したものです。
高知市は、県人口・行政機能・医療機能・商業機能が集まる高知県の中枢都市です。一方、浦戸湾、鏡川、江ノ口川などの河川・水路、海抜の低い平野部、沿岸低地を抱えており、強い揺れだけでなく、液状化、火災、津波、河川遡上、長期浸水、交通・物流の分断といった複合災害に特に注意が必要です。
なお、「高知市中心地直下を震源とする内陸地震」だけでは、大規模な海底地殻変動を伴わない限り、南海トラフ巨大地震のような広域・巨大津波が必ず起こるわけではありません。しかし高知市は太平洋に近く、浦戸湾を通じた海水の流入や、強い地震後の津波警報・注意報、河川遡上、堤防・水門の損傷などによる浸水リスクがあるため、本レポートでは津波・沿岸浸水も重要な検討項目として扱います。
高知県が2025年10月に公表した南海トラフ地震の震度分布・津波浸水予測は、国の最新想定に県内の地盤・地形情報を加えて詳細化したものです。高知市周辺では、強い揺れと津波浸水が同時に生じ得る地域特性を前提に、防災計画を検討する必要があります。〔高知県「令和7年度[高知県版]南海トラフ地震による最大クラスの震度分布・津波浸水予測について」|2025年10月〕<<2>>
2. 地震の基本想定
本レポートでは、被害が大きくなりやすい条件として、次のような地震を仮定します。
- 震源:高知市中心市街地付近の地下
- 地震の規模:マグニチュード7.1~7.4程度
- 震源の深さ:地下10~20キロメートル程度
- 地震の種類:浅い内陸直下型地震
- 最大震度:高知市中心部および周辺の一部で震度7
- 強い揺れの継続時間:おおむね20~60秒
- 発生時刻:冬の平日夕方から夜間、乾燥・強風の条件を主想定
- 季節条件:暖房器具の使用、帰宅ラッシュ、商業施設・飲食店の営業、交通混雑が重なる時間帯
この条件では、高知市の中心部、住宅密集地、商業地、行政・医療施設周辺、河川低地、港湾・湾岸部に大きな被害が集中する可能性があります。
特に、震度7の揺れは「立っていることが困難で、耐震性が不十分な建物では倒壊が多発し得る」水準です。家具の転倒、ガラスの落下、天井材の崩落、エレベーター停止、火災、道路閉塞、上下水道や通信の寸断が同時に生じます。
3. 高知市の地域特性と被害を増幅させる要因
3-1. 県都機能の集中
高知市には、高知県庁、高知市役所、高知県警察本部、消防、報道機関、金融機関、主要病院、大学、商業施設、交通結節点などが集中しています。
このため、被災後に行政・医療・金融・通信・物流の中枢機能が同時に打撃を受けるおそれがあります。単なる一都市の被害にとどまらず、高知県全域の災害対応能力が低下する可能性があります。
県庁や市役所の建物自体が使用可能であっても、職員の被災、道路寸断、通信障害、停電、家族の安否確認、避難所対応などにより、通常の行政サービスを直ちに維持することは困難になります。
3-2. 低地・河川・湾岸を抱える地形
高知市には鏡川、江ノ口川、国分川、舟入川などが流れ、浦戸湾に接続しています。市街地の一部は低平地に広がっており、地震による地盤沈下、液状化、護岸損傷、水門・排水機場の停止、津波や高潮の河川遡上が重なると、浸水被害が長期化するおそれがあります。
海から離れた場所でも、河川や水路を通じて水が入り込む場合があります。また、停電によって排水ポンプが止まれば、地震直後の雨や津波・高潮の残水を排除できず、浸水が数日から数週間続く地域が生じる可能性があります。
3-3. 軟弱地盤と液状化
河川沿い、埋立地、旧河道、砂質地盤が広がる地域では、地震の揺れによって液状化が発生する可能性があります。
液状化が生じると、住宅やビルが傾く、道路が波打つ、マンホールが浮き上がる、上下水道管が壊れる、橋の取り付け部に段差ができる、地下タンクや駐車場が損傷する、といった被害が生じます。
建物が倒壊しなくても、基礎や地盤の損傷によって使用不能となる例が増えます。結果として、避難生活が長期化し、復旧コストも大きくなります。
3-4. 木造住宅密集地と地震火災
高知市内には、古い木造住宅、狭い道路、商店・飲食店・住宅が混在する地区があります。冬季夕方から夜間に強い地震が起きた場合、暖房器具、厨房、ガス設備、電気配線、倒壊した建物内の火気などが出火原因となり得ます。
停電復旧時には、通電火災も大きな問題です。避難中にブレーカーを落とさず、破損した配線や家電に通電すると、再通電時に出火することがあります。
消防署や消防団も被災し、道路閉塞や断水で消火栓が使えない場合、初期消火が間に合わず、複数地区で延焼火災が同時多発するおそれがあります。
4. 想定される揺れによる直接被害
4-1. 建物被害
高知市中心部で震度7となった場合、特に耐震基準が古い建物、老朽化した木造住宅、十分な補強がされていない店舗兼住宅、狭い敷地に建つ建物などで倒壊・大破が増える可能性があります。
被害はおおむね次のように区分されます。
- 全壊・倒壊:旧耐震基準の木造住宅、老朽化建物、地盤条件が悪い地域の建物
- 大規模半壊:外壁・柱・基礎・屋根に大きな損傷があり、継続使用が困難な建物
- 中小被害:窓ガラス破損、内壁剥落、家具転倒、天井落下、配管破損
- 使用不能:建物自体は倒壊していなくても、断水・停電・エレベーター停止・地盤沈下・周辺道路閉塞により利用できない施設
高層建築物では、倒壊の可能性は相対的に低くても、長周期地震動による大きな揺れ、エレベーター閉じ込め、室内什器の転倒、天井材の落下、窓ガラスの破損、非常用電源の枯渇などが問題になります。
病院、福祉施設、学校、ホテル、商業施設、オフィスビルでは、多数の利用者が一時的に取り残される可能性があります。
4-2. 家具転倒・室内被害
人的被害は建物倒壊だけで起きるわけではありません。震度7では、家具、冷蔵庫、書棚、テレビ、食器棚、ピアノ、複合機、商品棚などが転倒・移動し、人を下敷きにする危険があります。
特に高齢者、乳幼児、障害のある人、就寝中の人は避難行動が遅れやすく、家具転倒による負傷や閉じ込めの危険が高くなります。
事務所、学校、医療機関、店舗では、棚からの落下物やガラス片で多数の軽傷者が発生する可能性があります。診療所や薬局の薬品棚、研究施設の薬品、飲食店のガス設備などは、二次災害にも直結します。
4-3. 文化財・観光資源への影響
高知市には高知城をはじめとする歴史・文化資源があります。石垣、瓦、門、木造建築、展示品などは強い揺れで損傷するおそれがあります。
観光施設の被災は、観光客の安全確保に加え、観光収入の減少、地域イメージの悪化、復旧・修繕の長期化につながります。高知城周辺、はりまや橋周辺、ひろめ市場周辺など、観光客と住民が混在する場所では、発災直後の避難誘導が重要です。
5. 津波・沿岸浸水・河川遡上の想定
5-1. 内陸直下型地震のみの場合
高知市中心地直下の内陸地震が主因である場合、海底の大規模な地殻変動がなければ、南海トラフ巨大地震級の津波が直接発生する可能性は高くありません。
ただし、以下のような局地的な水害・沿岸被害は起こり得ます。
- 港湾施設、護岸、堤防の損傷
- 液状化による地盤沈下と海水流入
- 水門、排水機場、樋門の故障
- 浦戸湾内での小規模な水位変動
- 河川護岸の崩壊による浸水
- 地震後の豪雨や高潮による排水不良
- 斜面崩壊や地滑りによる河道閉塞・一時的な洪水
つまり、巨大津波がなくても、低地では「地震による排水機能の低下」と「海・川・雨水の流入」が重なり、浸水が深刻化する可能性があります。
5-2. 南海トラフ地震との連動または広域海域地震の場合
より厳しい複合シナリオとして、高知市中心部で震度7の強い揺れが生じる地震が、南海トラフの大規模地震や海域の強い地震と連動・近接して発生した場合を考える必要があります。
この場合、高知市では揺れの直後から津波避難が必要となります。太平洋沿岸部や浦戸湾沿いでは、津波の到達までの時間が短い可能性があり、自動車避難に依存すると渋滞・道路損壊・放置車両で逃げ遅れが生じます。
特に注意が必要となるのは、次のような地域です。
- 浦戸湾沿岸
- 桂浜周辺
- 種崎地区
- 長浜地区
- 仁井田地区
- 五台山周辺の低地
- 鏡川・国分川・江ノ口川などの河川沿い低地
- 港湾・漁港・物流拠点の周辺
- 高知新港周辺および周辺の工業・流通地域
津波は「一度来たら終わり」ではありません。第2波、第3波がより大きくなることもあり、数時間から半日以上にわたって危険が続く可能性があります。避難後に海や川を見に戻る行為は極めて危険です。
高知県の最大クラスの南海トラフ地震想定では、県全体で早期避難率73%を前提としても、津波による死者は約1万4,000人と推計されています。これは高知市だけの数値ではありませんが、県内の沿岸・低地において、津波から迅速に逃げることが死者数を大きく左右することを示しています。〔高知県「令和7年度[高知県版]南海トラフ地震による最大クラスの被害想定の概要」|2026年3月〕<<5>>
5-3. 津波避難で起こり得る二次被害
津波避難では、次の問題が同時に起こる可能性があります。
- 道路の損傷、電柱倒壊、橋の通行止め
- 信号停止による交差点混乱
- 自動車の渋滞と避難遅れ
- 高齢者施設・病院での避難支援不足
- 観光客や外国人の避難先不明
- 夜間停電による避難路の視認性低下
- 避難ビルの混雑、収容力不足
- 家族の迎えや荷物の持ち出しによる避難開始の遅れ
- 火災や倒壊建物が避難経路を遮断する問題
津波から命を守るためには、「揺れを感じたら情報を待ちすぎず、海・川から離れて高い場所または津波避難ビルへ向かう」という原則の徹底が必要です。
6. 火災被害の想定
震度7の地震後、高知市内では数十件から条件次第では100件規模の出火が同時多発する可能性があります。全てが大規模火災に発展するわけではありませんが、消防力を上回る件数の火災が発生した場合、消火活動の優先順位付けが必要になります。
特に危険な条件は次のとおりです。
- 冬季の乾燥・強風
- 夕食準備や営業中の飲食店が多い時間帯
- 木造住宅・商店の密集地域
- 狭い道路が多く消防車両が入りにくい地区
- 断水により消火栓が使えない状態
- 倒壊建物や放置車両で道路が塞がれた状態
- 感震ブレーカーが未設置の住宅が多い状態
地震火災では、出火そのものだけでなく、避難路を炎や煙がふさぐことが死者数の増加につながります。延焼火災を防ぐには、建物の耐震化・不燃化、感震ブレーカーの設置、住宅用火災警報器の維持、地域の初期消火体制、消防水利の確保が重要です。
7. 人的被害の想定
7-1. 死者数の概算
高知市中心地を震源とする震度7級の内陸直下型地震では、被害の大きさは発生時刻、建物耐震化率、火災の拡大、津波の有無、避難行動、天候などにより大きく変動します。
本レポートの内陸直下型地震シナリオにおける高知市および周辺への影響としては、次のような幅を想定します。
- 津波を伴わない内陸直下型地震:死者約800~3,500人
- 火災が大規模化した場合:死者約2,000~5,000人
- 津波・河川遡上・広域浸水が重なった場合:死者約3,000~10,000人以上
- 南海トラフ巨大地震級の広域津波を伴う最悪級複合災害:高知市を含む県全体でさらに甚大な人的被害が起こり得る
これらは高知市直下地震を仮定した概算シナリオであり、公式の確定的予測値ではありません。実際の死者数は、耐震化、早期避難、出火抑制、救助体制、季節、時間帯、風速によって大きく変わります。
参考として、高知県の最大クラスの南海トラフ地震想定では、県全体の冬深夜・陸側ケースで死者数約2万3,000人、負傷者約4万2,000人、全壊建物約20万4,000棟とされています。〔高知県「地震・津波による最大被害一覧(高知県全体)」|2026年3月〕<<3>>
7-2. 負傷者・要救助者
死者以外にも、多数の重傷者、軽傷者、避難困難者、医療を必要とする人が発生します。
想定される人数の目安は次のとおりです。
- 重傷者:約3,000~10,000人
- 軽傷者:約10,000~35,000人
- 建物・家具の下敷きなどによる要救助者:約2,000~8,000人
- 一時避難者:約10万~25万人
- 長期避難者:約5万~15万人
高知市内の病院だけで全ての傷病者を受け入れることは困難です。病院自体が被災し、停電・断水・職員不足・医薬品不足・手術室使用不能などに陥る可能性があります。
災害拠点病院には重症者が集中しますが、道路寸断や救急車不足により搬送が遅れます。軽傷者が救急外来に集中すると、本来優先されるべき重症者の治療に支障が出るため、トリアージ、地域医療機関、救護所、広域医療搬送が不可欠になります。
7-3. 災害関連死
大地震では、建物倒壊や津波による直接死だけでなく、避難生活中の「災害関連死」が増加します。
主な原因は以下のとおりです。
- 避難所での感染症
- 脱水、栄養不足、持病の悪化
- 断水による衛生環境の悪化
- 車中泊による深部静脈血栓症、いわゆるエコノミークラス症候群
- 避難生活のストレス、不眠、うつ状態
- 透析、在宅酸素、インスリン、人工呼吸器などの医療継続不能
- 高齢者・障害者の見守り不足
- 介護施設の職員不足
- 熱中症または低体温症
直接被害を免れた人でも、支援が遅れれば命を落とす可能性があります。特に高齢者、乳幼児、妊産婦、障害者、外国人、生活困窮者、持病のある人への個別支援が必要です。
8. ライフラインへの影響
8-1. 電力
送電線、変電所、配電設備、電柱、引込線などが損傷し、高知市の広範囲で停電する可能性があります。停電は照明が消えるだけの問題ではありません。
停電によって、次の機能が止まります。
- 信号機
- 携帯電話基地局
- 病院の一部医療機器
- エレベーター
- 冷蔵・冷凍設備
- 給水ポンプ
- 排水ポンプ
- ガソリンスタンドの給油機
- コンビニやスーパーのレジ・冷蔵設備
- 金融機関のATM
- 工場や物流倉庫の設備
- 在宅医療機器
非常用発電機を備えた施設でも、燃料が数日分に限られる場合があります。道路が通れず燃料補給ができなければ、病院や避難所、通信施設の機能が徐々に低下します。
8-2. 水道・下水道
高知市では、配水管・給水管の破損、浄水施設の被害、停電によるポンプ停止、液状化による管路の変形などにより、断水が長期化する可能性があります。
高知県の最大クラスの南海トラフ地震想定では、県全体で断水人口は約63万3,000人とされています。〔高知県「令和7年度[高知県版]南海トラフ地震による最大クラスの被害想定の概要」|2026年3月〕<<4>>
高知市中心部の直下地震でも、数十万人規模の断水が起きる可能性があります。断水は飲料水不足だけでなく、トイレが使えない、手洗いができない、病院で衛生管理ができない、消火栓が使えないという複合的な被害につながります。
下水道が破損すると、道路から汚水があふれたり、マンホールが浮き上がったり、衛生状態が急速に悪化したりします。
8-3. 都市ガス・LPガス・燃料
ガス管やガス設備が損傷すると、供給停止や漏えい事故が発生する可能性があります。都市ガスだけでなく、高知県ではLPガスを利用する家庭・事業所も多く、容器転倒や配管損傷による火災・爆発に注意が必要です。
また、物流停止によりガソリン、軽油、灯油、LPガスなどの燃料が不足します。燃料不足は、救急車、消防車、自衛隊車両、配送車、発電機、漁船、農業機械、通勤車両などの稼働に影響します。
8-4. 通信
発災直後には通話が集中し、携帯電話がつながりにくくなります。基地局が停電・損傷すれば、データ通信も不安定になります。
通信障害は、安否確認だけでなく、救助要請、避難情報、医療連携、物流調整、行政指示、金融取引、学校連絡などを妨げます。
防災無線、ラジオ、衛星電話、災害用伝言サービス、自治体アプリ、SNSなど複数の情報手段を平時から使えるようにしておく必要があります。ただし、SNSでは誤情報が拡散しやすいため、行政・気象庁・消防・警察などの公式情報を確認することが重要です。
9. 交通・物流への影響
9-1. 道路
高知市では、橋梁、盛土、擁壁、トンネル、交差点、河川沿い道路、湾岸部道路などが被害を受ける可能性があります。電柱倒壊、建物倒壊、路面の亀裂、液状化、放置車両により、中心市街地の道路は多数が通行不能となるおそれがあります。
高知自動車道、国道32号、国道33号、国道55号、国道56号などの広域交通網に支障が出れば、県外からの救援物資や医療支援の到着も遅れます。
道路啓開、すなわち救急・消防・自衛隊・物資輸送のために最低限の道路を確保する作業は、発災直後の最優先課題になります。
9-2. 鉄道・路面電車・バス
JR土讃線、とさでん交通の路面電車、路線バスなどは、軌道・架線・駅施設・車両基地・電力設備の点検が必要となり、直後からの運行継続は難しいと考えられます。
高知駅周辺は帰宅困難者や観光客が集中する場所となる可能性があります。電車やバスが止まれば、自宅まで歩けない高齢者、観光客、子ども、障害者などが発生します。
9-3. 港湾・空港
高知港、高知新港、浦戸湾周辺の港湾機能は、岸壁損傷、液状化、クレーン倒壊、コンテナ流出、航路障害、津波警報による閉鎖などの影響を受ける可能性があります。
高知龍馬空港も、滑走路・管制・燃料供給・アクセス道路の状況によっては機能が低下します。ただし、空港が早期に利用可能となれば、広域医療搬送や緊急物資輸送の重要拠点になります。
10. 経済被害・経済損失の想定
10-1. 経済被害の考え方
経済被害は、大きく次の二つに分けられます。
- 直接被害:建物、設備、在庫、道路、港湾、上下水道、電力設備など、地震で壊れた資産の損害額
- 間接損失:営業停止、観光客減少、雇用減少、物流停滞、サプライチェーン寸断、税収減少、復旧遅延などに伴う損失
高知市は県内経済の中心であるため、市内の被害は県全体の経済活動に直結します。小売、飲食、宿泊、観光、医療、教育、建設、製造、農林水産物流、行政サービス、金融など、幅広い業種が同時に影響を受けます。
10-2. 直接経済被害
高知市中心地直下の震度7級地震における直接被害は、建物倒壊、火災、液状化、インフラ損傷、港湾・商業施設被害などを合算し、次の規模が想定されます。
- 軽度から中程度の被害シナリオ:約2兆円~4兆円
- 大規模火災・液状化・広域インフラ被害を伴うシナリオ:約4兆円~7兆円
- 津波・長期浸水を伴う複合災害シナリオ:約6兆円~10兆円
主な内訳は、住宅・店舗・事業所の再建費用、公共施設の復旧費、道路・橋梁・港湾・河川施設の復旧費、電力・水道・通信の復旧費、在庫や設備の損失などです。
参考として、高知県が2026年3月に公表した最大クラスの南海トラフ地震想定では、県全体の直接被害額は約20.5兆円とされています。これは高知市直下地震のみの数値ではなく、高知県全域に及ぶ最大級の地震・津波被害を対象としたものです。〔高知県「地震・津波による最大被害一覧(高知県全体)」|2026年3月〕<<3>>
10-3. 間接経済損失
間接経済損失は、直接被害より長期化しやすい特徴があります。建物が再建されても、顧客が戻らない、従業員が避難・転出する、仕入れが再開できない、観光客が減少する、といった形で地域経済が弱体化します。
高知市中心地直下地震による間接損失は、発災後数年間で次の規模に達する可能性があります。
- 約3兆円~8兆円
- 復旧・復興の遅れや人口流出が深刻な場合:約10兆円規模
影響が大きい分野は以下のとおりです。
- 飲食業・小売業:店舗損壊、客足減少、仕入れ停止、決済障害
- 観光業:宿泊キャンセル、観光地閉鎖、交通手段の減少、風評被害
- 製造業:工場・倉庫損傷、部品調達停止、電力・水不足
- 農林水産業:出荷停止、冷蔵設備停止、港湾・漁港被害、農地浸水
- 建設業:復旧需要は増えるが、人手・資材・重機不足が深刻化
- 医療・介護:施設被害、職員不足、利用者増加、収支悪化
- 金融・不動産:担保価値低下、保険支払い増加、事業融資の焦げ付き
- 教育・子育て:学校再開の遅れによる就労制約、人口流出
10-4. 総経済損失
直接被害と間接損失を合計した高知市中心地直下地震の総経済損失は、概ね次の範囲が考えられます。
- 基本シナリオ:約5兆円~10兆円
- 火災・液状化・長期停電が重なるシナリオ:約8兆円~15兆円
- 津波・長期浸水・人口流出を伴う最悪級シナリオ:約12兆円~20兆円以上
高知県の最大クラス南海トラフ地震想定は、極めて低頻度ながら発生し得る最大級の地震・津波を対象としており、防災対策の基礎資料として位置付けられています。〔高知県「令和7年度[高知県版]南海トラフ地震による最大クラスの被害想定」|2026年3月〕<<1>>
高知市直下地震の被害額を考える際も、単年度の損害だけでなく、復興期間中の所得減少、地域企業の廃業、人口流出、税収減少、社会保障費増加まで視野に入れる必要があります。
11. 観光・地域産業への影響
高知市は、歴史・食・自然・よさこい祭りなどを観光資源とする都市です。大地震が発生すれば、観光施設そのものの損傷だけでなく、交通の途絶、宿泊施設の避難所転用、予約キャンセル、報道によるイメージ低下が重なります。
短期的には観光客が大幅に減少し、宿泊、飲食、土産物、交通、イベント関連事業者に大きな打撃が及びます。
一方で、復興が進んだ後には、観光再開、地域産品の販路回復、復興ツーリズム、文化財修復などを通じて地域経済を再建する余地があります。ただし、そのためには被災直後から地域事業者の資金繰り支援、雇用維持、事業継続計画の実行が必要です。
農林水産業では、漁港・市場・冷凍設備・道路・燃料供給の被害が出荷を止めます。高知県産品の県外出荷が停滞すれば、生産者だけでなく、加工業者、運送事業者、卸売業者にも損失が広がります。
12. 避難所・住宅・生活再建への影響
12-1. 避難所の不足と長期化
大規模地震後には、体育館、学校、公民館、福祉施設などが避難所となります。しかし、避難所自体が損傷した場合や、津波浸水想定区域にある場合、利用できる施設が限られます。
高知県の最大クラス南海トラフ地震想定では、県全体で避難者は約43万人とされています。〔高知県「令和7年度[高知県版]南海トラフ地震による最大クラスの被害想定の概要」|2026年3月〕<<4>>
高知市直下地震でも、数万人から十数万人規模の避難者が発生し得ます。避難所では、次の課題が深刻になります。
- トイレ不足
- 飲料水・食料不足
- プライバシーの欠如
- ペット同行避難への対応
- 女性・子どもの安全確保
- 高齢者・障害者・医療的ケア児への支援
- 感染症対策
- ごみ処理の停滞
- 駐車場不足と車中泊の増加
- 避難所運営を担う住民・職員の疲弊
12-2. 仮設住宅と住宅再建
全壊・大規模半壊の住宅が多数出ると、応急仮設住宅やみなし仮設住宅が必要になります。しかし、高知市では用地確保、資材不足、施工業者不足、インフラ復旧の遅れが課題となります。
賃貸住宅を活用する「みなし仮設住宅」は比較的早く供給できる可能性がありますが、被災者が広域に分散すると、地域コミュニティや見守り機能が弱まり、孤立や災害関連死のリスクが高まります。
住宅再建には、地震保険、被災者生活再建支援金、自治体支援、融資、義援金などが必要です。ただし、住宅ローンが残る世帯では、旧住宅のローンと再建費用が二重にのしかかる問題が起きます。
13. 発災からの時系列想定
発災直後~10分
- 高知市中心部で震度7の激しい揺れ
- 建物倒壊、家具転倒、ガラス落下が発生
- 停電、携帯電話の混雑、信号停止
- エレベーター閉じ込め
- 飲食店、住宅、工場などで出火
- 道路に落下物、電柱、看板、倒壊建物が出現
- 海岸・河川周辺では津波情報を警戒
- 住民、通勤者、観光客が一斉に避難を開始
発災後10分~3時間
- 消防・警察・救急への通報が集中
- 火災が複数箇所で拡大
- 救助要請が急増するが、道路閉塞で到達困難
- 病院に負傷者が集中
- 帰宅困難者が高知駅、中心商業地、学校、事業所などに滞留
- 津波警報や注意報が出た場合、沿岸部・河川沿いで避難混乱
- 行政は災害対策本部を設置するが、通信・職員参集に支障
発災後1日~3日
- 生存率が高い「72時間」の救助活動が最優先
- 断水、停電、通信障害、燃料不足が本格化
- 避難所が過密化
- 食料・毛布・簡易トイレ・衛生用品が不足
- 警察・消防・自衛隊・DMATなどの広域応援が到着
- 道路啓開と緊急輸送路の確保が進む
- デマや誤情報、買い占め、犯罪リスクへの対応が必要
発災後1週間~1か月
- 一部地域で電力・通信が復旧する一方、断水と下水道被害が残る
- 学校再開の見通しが立たず、子どもの居場所が課題となる
- 事業者の資金繰り悪化、休業・廃業が増える
- がれきの仮置場確保が問題化
- 避難生活の長期化により、感染症、精神的負担、災害関連死が増える
- 建物の危険度判定、罹災証明、保険手続き、被災者支援が本格化
発災後数か月~数年
- 仮設住宅への入居、住宅再建、インフラ復旧が進む
- 復興工事による人手・資材不足、物価上昇が発生
- 被災地域からの人口流出、事業所移転、商店街の空洞化が懸念される
- 復興まちづくりでは、嵩上げ、耐震化、無電柱化、避難路整備、土地利用見直しが課題となる
- 観光・地域産業の再生には長期的な支援が必要となる
14. 重要な防災・減災対策
14-1. 個人・家庭で必要な備え
- 家具を固定する
- 感震ブレーカーを設置する
- 飲料水を最低3日分、可能なら1週間分備蓄する
- 食料、携帯トイレ、モバイルバッテリー、懐中電灯、ラジオを用意する
- 自宅、勤務先、学校からの避難経路を確認する
- 津波浸水想定区域では、避難場所・避難ビル・高台までの徒歩経路を確認する
- 家族の安否確認方法と集合場所を決める
- 服薬情報、保険証の写し、連絡先を防災袋に入れる
- 車の燃料を半分以下にしない
- ペットの避難用品を備える
14-2. 事業者に必要な備え
- 事業継続計画を作成・更新する
- 従業員の安否確認方法を複線化する
- データをクラウドや遠隔地にバックアップする
- 棚・設備・危険物を固定する
- 非常用電源と燃料を確保する
- 取引先・物流先を複数化する
- 在宅勤務や代替拠点の運用を準備する
- 顧客・従業員への情報発信手順を整える
- 津波避難訓練と帰宅困難者対応を実施する
14-3. 行政・地域に必要な備え
- 建物耐震化と危険ブロック塀対策
- 木造住宅密集地の不燃化・延焼遮断帯整備
- 避難所の耐震化、非常用電源、トイレ・水の確保
- 福祉避難所と要配慮者支援の実効性向上
- 津波避難タワー・避難ビル・避難路の整備
- 道路啓開計画、橋梁耐震化、無電柱化
- 水道管・下水道管の耐震化
- 医療機関、薬局、介護施設の事業継続対策
- 港湾・空港・物流拠点の早期復旧計画
- 観光客・外国人向けの多言語避難情報
- 地域住民による共助組織と防災訓練の強化
15. 結論
高知市中心地を震源とする震度7級の内陸直下型地震では、建物倒壊、地震火災、液状化、道路閉塞、停電・断水、通信障害、医療逼迫、行政機能低下、長期避難、地域経済の停滞が同時に発生する可能性があります。
内陸地震単独では、南海トラフ巨大地震のような大津波が必ず発生するわけではありません。しかし、高知市は浦戸湾、河川、低地、沿岸部を抱えるため、地震後の津波警報、河川遡上、地盤沈下、護岸損傷、排水機能停止、豪雨・高潮との複合災害を軽視できません。
人的被害は、耐震化、家具固定、火災対策、早期避難、要配慮者支援、道路啓開、医療・通信・物流の冗長化によって大きく減らせます。特に津波の可能性がある場合は、「情報を待ちすぎず、揺れたらすぐ高い場所へ逃げる」という行動が生死を分けます。
高知県の最大クラス南海トラフ地震想定では、県全体で死者約2万3,000人、全壊約20万4,000棟、直接経済被害約20.5兆円という極めて大きな被害が示されています。〔高知県「令和7年度[高知県版]南海トラフ地震による最大クラスの被害想定の概要」|2026年3月〕<<3>><<4>>
高知市直下地震の想定においても、このような広域災害への備えと共通する対策が不可欠です。個人の備蓄や住宅耐震化だけでなく、地域・企業・行政が「発災直後に何を守り、どの機能を最優先で復旧させるか」を平時から具体化しておくことが、被害軽減と復興の早さを左右します。
防災関連情報

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※高い標高を基準とした防災移住のご参考に。標高60メートル以上(理想は100メートル以上)を推奨します。候補地は奈良県、京都府、兵庫県、岡山県、群馬県、埼玉県(大宮、所沢)です。地盤の強さも確認し、候補地の周りに豪雨による土砂崩れ、河川の氾濫による浸水の恐れが無いかも確認してください。
極地の氷が解けると日本も水没しちゃうってホント? GX入門/身近な疑問vs東大
標高・地盤認知の推奨
ステップ1
あなたの勤務先やお住まいの住所から標高を知りましょう!
↓ ↓ ↓
地理院地図 / GSI Maps|国土地理院のサイトの検索窓に住所を入れると標高がサイトの左下に表示されます。
移転予定先の標高も調査しておきましょう!
※標高は100m以上推奨です。(備えあれば憂いなし!)
ステップ2
あなたの勤務先やお住まいの住所から地盤の状態を知りましょう!
↓ ↓ ↓
地盤の状態は地盤サポートマップ【ジャパンホームシールド株式会社】のサイトで知ることができます。
移転予定先の地盤状態も調査しておきましょう!
ステップ3
地震による津波や温暖化による氷河融解による水位上昇をシミュレーションしましょう!
海面上昇シミュレーター | JAXA Earth Appsのサイトで水位が上昇した場合のシミュレーションが可能です。希望の地区へカーソルで移動してください。
縄文時代は今よりも120m水位が高かったようです。縄文海進(Wikipedia) とは?
防災認知ソース
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