防災 最新(2026.08.29)震源被害想定 震度7以上 福岡県福岡市の中心地を震源とする震度7以上の大地震発生時の被害想定
福岡県福岡市中心地を震源とする震度7以上の大地震の被害想定レポート
1. はじめに:本レポートの位置付け
福岡市の中心地、具体的には天神・赤坂・警固・大名・博多駅周辺を含む福岡平野中央部の地下で、最大震度7となる内陸直下型地震が発生した場合を想定します。
これは特定の地震を予知するものではなく、防災・事業継続・避難計画を検討するための仮想シナリオです。被害規模は、地震の規模、断層のずれ方、発生時刻、季節、気象、建物の耐震性、火災の発生件数、津波の有無などで大きく変わります。
福岡県では2026年6月、玄界灘側の小呂島近海断層帯と警固断層帯が連動するマグニチュード8.1級地震を対象に、最大震度7、直接死約2,400人、災害関連死約900人、避難者最大約36万9,000人、全壊・全焼建物約4万5,000棟とする被害想定が公表・報道されています。この想定では津波による被害が十分には反映されていない、または詳細が調査中とされています。<<1>><<2>><<4>>
本レポートでは、この公表想定を重要な比較材料としつつ、さらに厳しい条件として「福岡市中心地直下で強い揺れが発生し、都心部・港湾部・地下空間・埋立地に被害が集中する場合」を検討します。
2. 想定する地震シナリオ
2-1. 基本シナリオ
本レポートの基本条件は次のとおりです。
- 震源:福岡市中心部の地下、天神・警固・赤坂・博多駅周辺から数km程度の範囲
- 地震の種類:活断層による浅い内陸直下型地震
- 想定規模:マグニチュード7.2〜7.8程度
- 震源の深さ:地下10〜15km程度
- 最大震度:震度7
- 強い揺れの継続時間:おおむね30秒〜1分以上
- 発生時刻の想定:
- 平日昼間:通勤者・観光客・買い物客・就業者が集中
- 冬季夕方〜夜間:暖房器具、火気、帰宅困難者、低温環境の影響が拡大
- 台風・豪雨後:地盤緩み、河川・排水機能低下、避難環境悪化の可能性
特に福岡市は、九州最大級の商業・行政・交通・観光・国際交流の拠点です。天神地区、博多駅地区、博多港、福岡空港、地下鉄、都市高速、九州自動車道への接続、九州大学病院などの都市機能が比較的狭い範囲に集まっています。そのため、物的被害だけでなく、九州全域の経済・物流・行政・医療に連鎖的な影響が及ぶおそれがあります。
2-2. 特に危険となる地域特性
福岡市中心部では、以下の条件が複合すると被害が大きくなります。
- 警固断層帯などの活断層が福岡市街地近くに存在すること
- 天神、博多駅、祇園、中洲、港湾部などに高層建築物・地下空間・繁華街が集中していること
- 博多湾沿岸に埋立地、港湾施設、物流施設、倉庫、工業・業務施設が多いこと
- 博多駅周辺、天神地下街、地下鉄駅、地下駐車場、地下通路など、地下空間の利用密度が高いこと
- 那珂川、御笠川、室見川などの河川低地、沿岸低地、埋立地で液状化や浸水が起こり得ること
- 福岡空港が市街地に近く、航空・道路・鉄道の障害が重なりやすいこと
- 多数の観光客、外国人旅行者、留学生、短期滞在者がいること
- 九州の企業本社・支社、金融機関、行政機関、情報通信拠点が集中していること
3. 発災直後から72時間までの推移
3-1. 発災直後:0〜10分
震度7の揺れでは、多くの人が立っていられず、固定されていない家具や什器が激しく転倒します。天神・博多駅周辺のオフィス、商業施設、ホテル、飲食店、地下街では、照明、天井材、商品棚、ガラス、看板、厨房機器などが落下・転倒する可能性があります。
中低層の古い建物、耐震性能が低い木造住宅、老朽化した雑居ビル、狭い道路沿いの建物では倒壊リスクが高まります。新耐震基準以前の建築物や、耐震改修が十分に進んでいない建物では、柱・壁・接合部の損傷により使用不能となる例が増えると考えられます。
直後に起こり得る主な事象は次のとおりです。
- 建物倒壊、外壁・窓ガラス・看板・エレベーター部品の落下
- 家具転倒、棚からの商品落下、オフィス機器の転倒
- エレベーター閉じ込め
- 地下鉄・JR・西鉄電車・バス・都市高速の緊急停止
- 携帯電話回線の輻輳、通信障害
- 信号機停止による交差点の混乱
- 火災報知器やスプリンクラーの作動
- ガス管・水道管の破損、漏水
- 飲食店やホテルの厨房からの出火
- 病院、介護施設、保育施設での避難・安全確認の困難化
- 福岡空港の滑走路点検、航空便の停止・引き返し・欠航
- 博多港の岸壁、コンテナヤード、物流倉庫の被害確認
平日昼間であれば、天神地区と博多駅地区には通勤者、学生、買い物客、観光客、出張者が集中します。建物自体が倒壊しなくても、避難者が一斉に屋外へ出ることで、歩道、交差点、広場、駅前空間に人が滞留します。
3-2. 発災後10分〜数時間:火災・救助・交通麻痺
震度7級の強い揺れの後には、複数地点で火災が同時発生する可能性があります。特に危険なのは、飲食店、ホテル、商業施設、木造住宅密集地、ガソリンスタンド周辺、工場・倉庫、電気設備、ガス設備です。
福岡市中心部では、高層建築物が多い一方、繁華街の一部には狭い道路、古い建物、飲食店、雑居ビルが集まる地区もあります。中洲、春吉、住吉、博多旧市街の一部、住宅地と商業地が混在する地区では、道路閉塞や消防活動の遅れが火災延焼を拡大させる可能性があります。
消防車、救急車、警察車両は、以下の要因で現場到着が遅れるおそれがあります。
- 道路上の瓦礫、倒壊建物、落下物
- 信号停止による交差点の渋滞
- 放置車両や違法駐車
- 橋梁・高架道路・トンネルの安全点検
- 都市高速や主要幹線道路の通行規制
- 燃料供給の混乱
- 同時多発する救助要請・火災通報
火災が強風時に重なった場合、延焼区域が広がり、数百棟規模の焼失に至る地区が出る可能性があります。福岡市では海風や季節風が強い日もあり、乾燥した冬季の夜間、あるいは強風下の発災では最悪条件となります。
3-3. 発災後1〜3日:救助、避難、断水・停電の深刻化
発災から72時間程度は、倒壊建物に閉じ込められた人の救助、重傷者の搬送、火災鎮圧、道路啓開が最優先となります。しかし、福岡市は人口密度が高く、昼間人口も多いため、医療・救急資源が急速に逼迫する可能性があります。
救急搬送が必要な人は、建物倒壊による外傷だけではありません。
- 骨折、挫滅症候群、頭部外傷
- ガラスや看板の落下による負傷
- 火傷、煙の吸入
- 心筋梗塞、脳卒中、呼吸器疾患の悪化
- 在宅人工呼吸器、透析、インスリン、酸素療法の中断
- 高齢者の転倒・低体温症・脱水
- 避難中の持病悪化
- 心的外傷、パニック、急性ストレス反応
水道、電気、通信、ガスが同時に止まると、避難生活の質が急速に低下します。特にマンション居住者は、停電によりエレベーターや給水ポンプが停止し、高層階への移動、トイレの使用、飲料水確保が困難になります。
4. 津波・高潮・港湾被害の想定
4-1. 福岡市中心部における津波リスク
福岡市は太平洋沿岸の都市と比べると、巨大津波が直撃する典型的な地形ではありません。しかし、博多湾、玄界灘、沿岸断層、海底地すべり、地震による海底地盤変動などの条件次第では、津波や急激な潮位変動が発生する可能性があります。
福岡県が2026年に公表した小呂島近海断層帯と警固断層帯の連動地震に関する被害想定では、津波被害の詳細は十分に織り込まれていない、または浸水域などの調査が進行中とされています。したがって、「福岡市では津波は起きない」と断定することは危険です。<<1>><<4>>
特に警戒が必要なのは、次の地域です。
- 博多港周辺
- 中央ふ頭、博多ふ頭、箱崎ふ頭
- アイランドシティ
- 香椎浜、名島、東浜
- 百道浜、西新、姪浜周辺
- 那珂川・御笠川などの河口部
- 港湾背後地の低地、埋立地、地下駐車場
- 海沿いの工場、倉庫、物流施設、冷凍・冷蔵施設
4-2. 津波の規模と到達時間
本シナリオでは、福岡市中心部の直下地震を主条件とするため、太平洋側で想定される数十m級の巨大津波を前提にはしません。ただし、沖合断層の連動、海底地すべり、港湾内での反射や増幅が起きた場合には、沿岸部で人命・物流・地下空間に重大な影響を与える水位変動が起こり得ます。
被害を大きくする要因は、津波高だけではありません。
- 地震で堤防、岸壁、水門、排水施設が損傷していること
- 停電で排水ポンプが停止していること
- 地盤沈下や液状化で堤防・護岸が変形すること
- 漂流物が橋や水門、排水路を塞ぐこと
- 夜間や停電時で避難情報が届きにくいこと
- 地下街、地下駐車場、地下鉄出入口へ水が流入すること
- 海上コンテナ、車両、船舶、木材などが漂流すること
仮に津波そのものが限定的であっても、地震後の満潮、高潮、豪雨、河川逆流が重なると、沿岸低地や河口部では複合災害となる可能性があります。
4-3. 港湾機能への影響
博多港は、旅客、国際フェリー、コンテナ、食品、生活物資、建設資材、燃料などを扱う重要港湾です。港湾機能が停止すると、福岡市だけでなく九州北部の物流・観光・国際交流にも影響します。
想定される被害は次のとおりです。
- 岸壁の沈下、亀裂、段差、液状化
- ガントリークレーン、荷役機械、倉庫の損傷
- コンテナの転倒・散乱
- 港内航路の障害物・沈船・漂流物
- 燃料タンク、危険物施設からの漏えい
- 冷凍・冷蔵倉庫の停電による食品廃棄
- フェリー・クルーズ船・貨物船の欠航
- 港湾道路・橋梁の通行止め
- 税関、検疫、物流事務所、情報システムの停止
港湾の復旧には、単に岸壁を修復するだけでなく、航路啓開、沈下地盤の補修、クレーン点検、電力復旧、通関・検疫機能の再開が必要です。そのため、完全復旧まで数か月から数年単位を要する施設が出る可能性があります。
5. 建物倒壊、地盤被害、液状化
5-1. 建物被害
震度7では、耐震性の低い木造住宅、旧耐震基準の建築物、一部の老朽化した雑居ビルなどで倒壊・大破が起こる可能性があります。新しい耐震基準で建てられた建物は倒壊を免れる可能性が比較的高いものの、無被害とは限りません。
高層マンション、オフィスビル、ホテルでは、構造躯体が保たれても以下の被害が起こり得ます。
- 天井材、間仕切り、照明、配管の落下
- エレベーター停止・閉じ込め
- スプリンクラー配管破損による漏水
- 非常用発電機の燃料不足・故障
- 外壁、窓ガラス、カーテンウォールの損傷
- 受水槽・給水設備の故障
- 機械室、電気室、通信設備の損傷
- 高層階での長周期地震動による家具転倒
博多駅、天神地下街、地下鉄駅、地下連絡通路、大型商業施設では、利用者の誘導、避難口の確保、天井・照明・案内板の落下対策が重要です。建物が倒壊しなくても、内部設備の損傷で長期間使用できなくなる施設が多数出ると考えられます。
5-2. 液状化
液状化とは、地震の揺れで地盤中の砂と水が分離し、地盤が一時的に泥水のような状態になる現象です。埋立地、砂質地盤、旧河道、河口低地などで起こりやすく、建物の沈下・傾斜、道路の波打ち、マンホール浮上、地下配管破断を引き起こします。
福岡市では、博多湾沿岸の埋立地、港湾部、河川沿いの低地などで液状化リスクを考慮する必要があります。福岡県は断層ごとの震度予測と液状化予測マップを公開しており、地域ごとの地盤条件を確認することが重要です。<<5>>
液状化によって想定される影響は次のとおりです。
- 港湾・物流施設の地盤沈下
- 道路の段差、陥没、橋台背面の沈下
- 上下水道管、ガス管、通信管の破損
- マンホールの浮上
- 建物基礎の沈下・傾斜
- 駐車場・地下施設への浸水
- 鉄道・道路・港湾荷役機械の運用停止
- 消防・救急車両の通行困難
- 復旧工事の長期化
5-3. 河川・堤防・排水施設
那珂川、御笠川、室見川などでは、河川護岸、堤防、水門、排水機場、橋梁の被害が懸念されます。地震直後に大雨が降らなくても、護岸の変形、ポンプ停止、下水管損傷によって内水氾濫が発生する可能性があります。
特に地下空間が多い博多駅・天神周辺では、排水設備の損傷や停電が重なると、局地的な浸水が長時間続くおそれがあります。
6. 火災被害と有害物質事故
6-1. 同時多発火災
火災は、地震被害を大きく左右する要素です。発災時刻が夕食準備時間帯、営業中の飲食店が多い時間帯、寒冷期の暖房使用時間帯に重なると、出火件数が増えるおそれがあります。
福岡市中心部で想定される出火要因は以下です。
- 飲食店のガスコンロ、フライヤー、厨房機器
- 住宅のガス器具、電気ストーブ、石油ストーブ
- 電気配線の損傷、通電火災
- 工場・倉庫の危険物
- 自動車・バイクの燃料漏れ
- 非常用発電設備や蓄電池設備の事故
- 解体・復旧作業中の火気使用
停電復旧時に電気が再び流れることで発生する「通電火災」も大きなリスクです。避難時には、可能な範囲でブレーカーを落とすこと、感震ブレーカーを導入することが被害軽減につながります。
6-2. 危険物・有害物質
港湾部、工場、物流倉庫、給油施設、医療機関、研究施設では、化学物質や危険物の漏えいにも注意が必要です。
想定される影響には、次のものがあります。
- 燃料タンク・配管の損傷
- 油の海上流出
- 倉庫の化学品・洗剤・農薬・溶剤の流出
- 医療機関の薬品・放射性医薬品の管理困難
- アスベスト含有建材の飛散
- 倒壊建物からの粉じん・有害物質の拡散
- 冷媒ガス、アンモニアなどの漏えい
これらは避難・救助活動を妨げるだけでなく、長期的な環境汚染、事業停止、風評被害につながる可能性があります。
7. 人的被害の想定
7-1. 死者数
死者数は、発生時刻や火災、建物耐震化、津波、避難の成否によって大きく変わります。福岡県の2026年公表想定に関する報道では、小呂島近海断層帯と警固断層帯の連動地震で、直接死約2,400人、災害関連死約900人、合計約3,300人とされています。<<1>><<2>>
ただし、この数値は福岡市中心部直下の単独地震だけを示すものではなく、県内の広域被害を含む想定です。また津波影響が十分に反映されていない可能性もあります。
本レポートの「福岡市中心地で震度7以上」という厳しい都市直下シナリオでは、人的被害は次の範囲を想定します。
- 直接死者:1,000〜3,500人程度
- 災害関連死:500〜1,500人程度
- 死者合計:1,500〜5,000人程度
- 重傷者:5,000〜15,000人程度
- 軽傷者:2万人〜8万人程度
- 要救助者:数千人規模
- 帰宅困難者:数十万人規模
これは公式確定値ではなく、都心部での火災、建物倒壊、地下空間事故、医療逼迫、長期避難、停電・断水、津波・浸水などが重なった場合の幅を持たせた試算です。
7-2. 災害関連死
直接的な倒壊や火災で助かった人でも、避難生活の悪化によって亡くなる災害関連死が増える可能性があります。高齢者、障害者、乳幼児、妊婦、持病のある人、透析患者、在宅医療利用者、外国人旅行者などは特に支援を必要とします。
災害関連死の主な要因は次のとおりです。
- 断水・停電による医療機器停止
- 透析・投薬・在宅酸素療法の中断
- 避難所の寒暖差、衛生悪化、睡眠不足
- 感染症、肺炎、エコノミークラス症候群
- ストレスによる心疾患・脳血管疾患
- 介護サービス・福祉サービスの停止
- 自宅に戻れないことによる生活機能低下
- 孤立、情報不足、精神的負担
8. ライフラインへの影響
8-1. 電力
送電線、変電所、配電設備、ビル内受電設備が損傷すると、広範囲で停電が起こります。停電は照明が消えるだけではなく、都市機能の基盤を止めます。
停電による主な影響は以下です。
- 信号機停止
- 鉄道・地下鉄・エレベーター停止
- 携帯電話基地局の機能低下
- 給水ポンプ停止
- コンビニ、スーパー、飲食店の営業停止
- 冷蔵・冷凍設備停止
- 医療機器、検査機器、電子カルテへの影響
- キャッシュレス決済、ATM、銀行システムの障害
- 工場・データセンター・オフィスの機能停止
- 防犯カメラ、入退館管理、消防設備の障害
中心部では非常用発電機を備える高層ビルや病院もありますが、燃料が尽きれば長期間の稼働は難しくなります。燃料輸送が止まると、非常用電源も数日程度で制約を受けます。
8-2. 水道・下水道
地震では、浄水場、配水池、送水管、配水管、下水管、ポンプ場が損傷する可能性があります。液状化地域や地盤の異なる境界部では、管路の破断が起こりやすくなります。
断水が長期化すると、飲料水不足だけでなく、トイレ、衛生、医療、消防、飲食、避難所運営に直結します。
- 断水世帯:数十万世帯規模となる可能性
- 復旧期間:軽微な地域で数日、配水管破損地域で数週間、広域管路損傷では数か月
- 下水道被害:トイレ使用制限、汚水逆流、悪臭、感染症リスク
- マンション:停電と給水ポンプ停止が重なることで高層階の生活継続が困難
8-3. 都市ガス・LPガス
都市ガスでは、安全装置により供給が停止する地域が出る可能性があります。復旧には、導管の点検、漏えい確認、各戸の安全確認が必要で、数週間から数か月かかる場合があります。
LPガスは個別供給のため、一部では早期復旧しやすい一方、容器転倒、配管破損、火災時の安全確保が必要です。
8-4. 通信・インターネット
通信は発災直後に最も混雑しやすいインフラです。安否確認、救助要請、避難情報、決済、物流、行政手続き、医療連絡などが通信に依存しているため、障害は二次被害を拡大させます。
想定される問題は以下です。
- 音声通話の輻輳
- 基地局停電、バックアップ電源枯渇
- 光回線・通信ケーブルの断線
- 携帯電話の位置情報や地図サービスの不安定化
- インターネット経由の決済・予約・業務システム停止
- 行政、防災、医療、企業間の連絡遅延
- デマや誤情報の拡散
9. 交通・物流への影響
9-1. 鉄道・地下鉄・バス
福岡市の公共交通は、地下鉄、JR、西鉄電車、西鉄バスなどが相互に接続しており、どこか一つの大きな障害が広域の移動制限につながります。
地震直後には、安全確認のため全線または大部分で運転見合わせとなる可能性が高いです。高架橋、橋梁、トンネル、駅設備、電力設備、軌道、ホームドア、信号・通信設備の点検には時間がかかります。
博多駅は九州新幹線、在来線、地下鉄、バス、高速バス、タクシーが集中する九州最大級の交通結節点です。博多駅が機能を失えば、九州全体の人流・物流に大きな影響が出ます。
9-2. 道路・都市高速
福岡都市高速、国道3号、国道202号、国道385号、主要県道、橋梁、立体交差部では、緊急点検と通行規制が行われる可能性があります。
道路が使えない場合、次の問題が連鎖します。
- 救急搬送の遅延
- 消防車両の到着遅れ
- 食料、水、医薬品、燃料の配送停止
- 避難所への支援物資到着遅延
- ごみ収集、し尿収集の停滞
- 企業の部品調達、生産、配送の停止
- 物流倉庫の滞留
- ガソリンスタンドへの燃料配送不足
9-3. 福岡空港
福岡空港は市街地に近く、国内外の航空路線を支える重要拠点です。地震後には滑走路、誘導路、ターミナル、燃料施設、管制通信、アクセス道路の点検が必要となり、欠航が相次ぐ可能性があります。
空港機能の停止は、観光客の滞留だけでなく、緊急医療搬送、救援物資、国際物流、企業出張、海外との連絡にも影響します。
9-4. 博多港・国際航路
博多港の機能低下により、韓国、中国などとの国際航路や貨物輸送にも影響が及びます。九州の輸入食品、部品、衣料品、日用品、建設資材などの供給網に遅れが発生する可能性があります。
10. 医療・福祉・行政機能への影響
10-1. 医療逼迫
福岡市には高度医療機関が集まっていますが、地震時には病院自体も被災者となります。建物損傷、断水、停電、職員の参集困難、医薬品不足、患者急増によって、通常の医療提供能力は大幅に低下します。
特に問題となるのは次の点です。
- 救急外来への患者集中
- 手術室、集中治療室、透析室の稼働制限
- 停電による医療機器への影響
- エレベーター停止による患者搬送困難
- 医療スタッフ自身の被災・家族対応
- 病院周辺道路の混雑
- 血液製剤、酸素、医薬品、燃料の不足
- 入院患者の転院先確保
軽傷者が救急病院へ集中すると、重傷者の治療が遅れるおそれがあります。避難所や地域の診療所、仮設救護所、医療機関間の患者振り分けが極めて重要になります。
10-2. 高齢者・障害者・子どもへの影響
福岡市中心部には高齢者世帯、単身世帯、外国人住民、学生、観光客、ビジネス滞在者が混在しています。避難情報を日本語だけで出すことは不十分で、多言語・やさしい日本語・視覚情報による伝達が必要です。
要配慮者には以下の支援が必要です。
- 福祉避難所の早期開設
- 車いす利用者、視覚・聴覚障害者への支援
- 医療的ケア児、在宅人工呼吸器利用者への電源確保
- 高齢者の服薬、介護、見守り
- 乳幼児のミルク、紙おむつ、衛生用品
- 妊産婦への医療・休息環境
- 外国人への避難情報、医療案内、交通案内
10-3. 行政機能
福岡市役所、福岡県庁、警察、消防、自衛隊、ライフライン事業者、医療機関、民間企業の対策本部が同時に機能しなければなりません。しかし、行政庁舎自体の被害、職員の参集困難、通信障害、データシステム障害が起きる可能性があります。
災害対応で特に重要なのは、次の優先順位です。
- 人命救助と火災対応
- 津波・浸水・土砂災害の避難誘導
- 医療搬送と要配慮者支援
- 道路啓開と緊急輸送路確保
- 飲料水、食料、トイレ、電源、通信の確保
- 避難所運営と治安維持
- 住宅再建、事業再開、学校再開などの復興対応
11. 避難者・帰宅困難者の想定
福岡県の2026年の広域被害想定では、最大約36万9,000人の避難者が見込まれています。<<1>><<2>> 福岡市中心部直下の地震では、避難者だけでなく、鉄道・道路停止によって帰宅できない人が大量に発生する可能性があります。
11-1. 避難者数
福岡市中心部で大規模な建物被害、断水、停電、火災、液状化が重なった場合、在宅避難が難しい住民や、宿泊先を失った旅行者などが避難所へ集中します。
想定される避難者は、条件によって次の規模となり得ます。
- 福岡市内の避難者:15万人〜35万人程度
- 福岡都市圏を含む広域避難者:30万人〜50万人程度
- 帰宅困難者:20万人〜40万人程度
- 一時滞在施設を必要とする旅行者・出張者・外国人:数万人規模
避難所の収容力だけでは足りず、学校、体育館、公民館、ホテル、企業施設、寺社、大学、民間ビルなどを活用する必要が出ます。
11-2. 避難生活で起こる問題
避難所では、単なる寝場所の不足だけでなく、次の問題が起こります。
- トイレ不足、衛生環境悪化
- 飲料水・食料・毛布・衛生用品不足
- プライバシー不足
- 女性、子ども、高齢者、障害者への配慮不足
- ペット同行避難への対応不足
- 感染症拡大
- 車中泊による健康被害
- 支援物資の偏在
- 住民と旅行者の情報格差
- 避難所運営者の疲弊
12. 経済被害・経済損失の想定
12-1. 経済被害の考え方
経済被害は大きく二つに分けられます。
- 直接被害:建物、設備、道路、鉄道、港湾、工場、在庫、住宅などが壊れる損害
- 間接損失:営業停止、雇用減少、観光減少、物流停止、生産停止、サプライチェーン寸断、消費減少などによる損失
福岡市は九州の経済中枢であるため、被害は市内にとどまりません。九州各県の企業、観光、物流、金融、IT、行政、教育、医療に波及します。
12-2. 直接被害額
福岡市中心部で震度7級の地震が発生した場合、直接被害額はおおむね次の範囲が想定されます。
- 住宅・建築物被害:2兆〜5兆円
- 商業施設・オフィス・ホテル被害:1兆〜3兆円
- 工場・倉庫・在庫・設備被害:0.8兆〜2兆円
- 道路・鉄道・地下鉄・橋梁・空港・港湾被害:1兆〜3兆円
- 電気・ガス・水道・通信などライフライン被害:0.5兆〜1.5兆円
- 公共施設、学校、病院、行政施設被害:0.3兆〜1兆円
これらを合計した直接被害は、概ね5兆〜15兆円程度に達する可能性があります。
特に高額化しやすいのは、地下鉄・地下街・高層ビル・港湾・空港・データセンター・大型商業施設・医療施設・再開発地区の復旧です。構造躯体が残っていても、設備、電気系統、配管、エレベーター、防災設備、内装、情報システムが損傷すると、復旧費用は大きくなります。
12-3. 間接損失
間接損失は、地震発生後に時間とともに積み上がります。福岡市中心部の機能停止は、九州全体の企業活動や観光に影響するため、直接被害を上回る可能性があります。
主な損失要因は以下です。
- オフィスワーク、行政、金融、コールセンター、IT業務の停止
- 博多駅・福岡空港・博多港の機能低下
- 観光客のキャンセル、ホテル稼働率低下
- 商業施設、飲食店、百貨店、コンベンション施設の営業停止
- 工場・倉庫・物流拠点の操業停止
- 九州各地への部品・食品・日用品配送遅延
- 従業員の避難、通勤困難、住宅喪失
- サプライチェーンの代替輸送費増加
- 企業の移転・投資延期・風評被害
- 学校休校、保育機能低下による労働力減少
- 保険金支払い、金融市場・不動産市場への影響
間接損失は、復旧期間によって大きく変わりますが、5兆〜20兆円程度に達する可能性があります。
12-4. 総経済損失
直接被害と間接損失を合わせた総経済損失は、福岡市中心部直下で震度7級地震が起き、交通・港湾・空港・地下空間・ライフラインに大きな被害が出た場合、次の範囲を想定します。
- 比較的早期に主要機能が復旧する場合:10兆〜15兆円程度
- 都心部、港湾、交通、ライフラインの復旧が長期化する場合:15兆〜25兆円程度
- 津波・大規模火災・液状化・長期避難・企業流出が重なる最悪級の場合:25兆〜40兆円程度
このうち、損壊した建物や設備そのものの損害が「経済被害」、営業停止や雇用・消費・観光・物流の低下まで含むものが「経済損失」です。
13. 産業別の影響
13-1. 商業・飲食・観光
天神、博多駅、中洲、キャナルシティ周辺、百道浜などの商業・観光機能が被災すると、百貨店、ホテル、飲食店、イベント、国際会議、ライブ・興行などに大きな影響が出ます。
観光業では、建物被害だけでなく、「福岡は危険ではないか」という風評が国内外に広がることが問題になります。航空便・港湾航路・新幹線の復旧が遅れれば、観光需要の回復には数年かかる可能性があります。
13-2. 製造業・物流業
福岡市内だけでなく、北九州、筑後、佐賀、熊本、大分などを含む九州の製造業は、博多港、福岡空港、道路・鉄道物流と結びついています。
部品が届かない、完成品を出荷できない、従業員が通勤できない、物流倉庫が使えないという状況が続けば、自動車、半導体、食品、機械、医薬品、建材などの生産に影響します。
13-3. 金融・情報通信・本社機能
福岡市には九州の金融機関、支社、本社、コールセンター、IT企業、データ関連企業が集まっています。建物被害に加え、通信・電力・クラウド接続の障害が起きれば、九州全体の企業活動に影響します。
企業は、データの遠隔バックアップ、在宅勤務体制、代替オフィス、非常用電源、複数通信回線、サプライヤー分散などの対策を進める必要があります。
14. 復旧・復興に必要な期間
14-1. 復旧の目安
被害の程度によりますが、一般的には次のような段階を想定できます。
- 数時間〜数日:人命救助、火災鎮圧、避難誘導、緊急輸送路の確保
- 1週間〜1か月:避難所安定化、応急給水、主要道路・通信の仮復旧
- 1か月〜6か月:鉄道・地下鉄・港湾・空港の段階的復旧、仮設住宅整備
- 6か月〜3年:住宅再建、ライフライン本復旧、被災企業の事業再開
- 3年〜10年:大規模再開発、港湾・地下インフラ・防災施設の本格復旧、地域経済回復
14-2. 長期化しやすい分野
復旧が長期化しやすいのは、以下の分野です。
- 液状化した埋立地・港湾施設
- 地下鉄・地下街・地下駐車場などの地下空間
- 上下水道の広域管路
- 高層建築物の設備・エレベーター・外壁
- 老朽化住宅・賃貸住宅の再建
- 中小企業・個人事業者の資金繰り
- 観光・飲食・イベント産業
- 被災者の心のケア、地域コミュニティ再建
15. 被害を減らすための重要対策
15-1. 家庭・個人が行うべき対策
- 自宅の耐震診断・耐震改修を行う
- 家具を固定し、寝室に大型家具を置かない
- 感震ブレーカーを設置する
- 飲料水を1人1日3L、最低3日分、できれば7日分備蓄する
- 食料、簡易トイレ、モバイルバッテリー、懐中電灯、常備薬を備える
- ハザードマップで津波、液状化、洪水、避難所を確認する
- 家族の安否確認方法、集合場所、連絡手段を決める
- 高層マンションでは停電・断水・エレベーター停止を前提に備蓄する
- 沿岸部・河口部では、揺れを感じたら海や川から離れ、高い場所へ避難する
- デマに惑わされず、行政・気象庁・消防などの公式情報を確認する
15-2. 企業・事業者が行うべき対策
- 事業継続計画を策定し、定期訓練を行う
- 従業員の安否確認システムを整備する
- 在宅勤務、分散勤務、代替拠点を確保する
- サーバー・重要データを地理的に離れた場所へバックアップする
- 非常用電源、燃料、衛星通信、複数回線を確保する
- 帰宅困難者向けの水、食料、毛布、トイレを備蓄する
- 火気設備、危険物、ガス設備を地震時に自動停止できるようにする
- 取引先、物流拠点、調達先を複数化する
- 港湾・空港・鉄道停止時の代替輸送手段を検討する
- 外国人従業員・観光客向けの多言語避難案内を整備する
15-3. 行政・都市インフラに求められる対策
- 警固断層帯周辺を含む詳細な地震被害想定の継続的な更新
- 津波浸水想定、港湾被害想定、地下空間浸水想定の精緻化
- 木造住宅密集地、老朽化建物、狭隘道路地区の耐震化・不燃化
- 感震ブレーカー普及支援
- 上下水道・ガス・通信の耐震化
- 港湾岸壁、橋梁、地下鉄、地下街、排水施設の耐震化
- 福祉避難所、医療救護所、広域避難場所の拡充
- 多言語・やさしい日本語による防災情報発信
- ドローン、衛星通信、AI解析などを使った被害状況把握
- 企業・大学・病院・ホテル・交通事業者との協定強化
- 九州各県との広域応援・物資輸送体制の整備
16. 総括
福岡市中心地を震源とする震度7以上の大地震では、建物倒壊、火災、液状化、ライフライン停止、地下空間被害、交通麻痺、港湾・空港機能低下、医療逼迫、避難所不足、観光・物流・企業活動の停滞が同時に起こる可能性があります。
特に福岡市は、九州全域の商業、交通、行政、医療、国際交流を支える都市であるため、被害は市内だけにとどまりません。博多駅、福岡空港、博多港、天神地区、地下鉄、都市高速、通信・金融拠点が同時に機能低下すれば、九州全体の経済活動に長期的な影響が及びます。
本レポートの厳しい想定では、死者は約1,500〜5,000人、避難者は数十万人、直接被害は約5兆〜15兆円、間接損失を含む総経済損失は約10兆〜40兆円規模に達する可能性があります。ただし、これらは地震の条件や被災状況によって大きく変動する幅のある試算です。
被害を減らす鍵は、建物とインフラの耐震化だけではありません。家具固定、感震ブレーカー、備蓄、早期避難、地域の助け合い、企業の事業継続計画、情報の多言語化、医療・福祉支援、港湾・空港・地下空間を含む複合災害対策を、平時から積み重ねることが重要です。
参考情報
- 福岡県の小呂島近海断層帯・警固断層帯連動地震に関する被害想定では、最大震度7、直接死約2,400人、災害関連死約900人、避難者約36万9,000人、全壊・全焼約4万5,000棟が報じられています。〔毎日新聞|2026年6月22日〕<<1>>
- 同被害想定について、津波被害は含まれていない、または浸水域などの詳細が調査中と報じられています。〔FBS NEWS|2026年6月22日、TNCニュース|2026年6月22日〕<<2>><<4>>
- 福岡県は断層ごとの震度予測・液状化予測マップを公開しています。〔福岡県防災ホームページ|参照日:2026年8月29日〕<<5>>
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※高い標高を基準とした防災移住のご参考に。標高60メートル以上(理想は100メートル以上)を推奨します。候補地は奈良県、京都府、兵庫県、岡山県、群馬県、埼玉県(大宮、所沢)です。地盤の強さも確認し、候補地の周りに豪雨による土砂崩れ、河川の氾濫による浸水の恐れが無いかも確認してください。
極地の氷が解けると日本も水没しちゃうってホント? GX入門/身近な疑問vs東大
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あなたの勤務先やお住まいの住所から標高を知りましょう!
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地理院地図 / GSI Maps|国土地理院のサイトの検索窓に住所を入れると標高がサイトの左下に表示されます。
移転予定先の標高も調査しておきましょう!
※標高は100m以上推奨です。(備えあれば憂いなし!)
ステップ2
あなたの勤務先やお住まいの住所から地盤の状態を知りましょう!
↓ ↓ ↓
地盤の状態は地盤サポートマップ【ジャパンホームシールド株式会社】のサイトで知ることができます。
移転予定先の地盤状態も調査しておきましょう!
ステップ3
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