防災 最新(2026.07.24)震源被害想定 震度7以上 愛知県名古屋市中区の愛知県庁を震源とする震度7以上の大地震発生時の被害想定
愛知県庁直下を震源とする震度7以上の大地震に関する被害想定レポート
1. はじめに
本レポートは、愛知県名古屋市中区三の丸にある愛知県庁付近を震源とする、内陸直下型の大地震が発生した場合を仮定し、人的被害、建物被害、経済被害、交通・物流、ライフライン、行政機能、津波その他の重大な影響を整理したものです。
これは特定の活断層や地震発生確率を示す公式予測ではなく、被害の規模と連鎖を把握するための最悪級シナリオに近い仮想想定です。実際の被害は、地震の規模、震源の深さ、断層の向き、発生時刻、季節、天候、火災の発生状況、住民の避難行動、建物の耐震化率などにより大きく変わります。
名古屋市の公的な南海トラフ地震想定では、最大クラスのケースで市内最大震度7、名古屋港区で最大2.4メートル程度の津波が見込まれています。ただし、これは主として海域を震源とする巨大地震の想定です。愛知県庁直下の内陸地震では、一般に南海トラフ地震ほどの広域津波は起こりにくい一方、震源直上の極めて強い揺れ、建物倒壊、都市火災、行政中枢の被災、地下空間被害、交通網の麻痺がより深刻な問題になります。
2. 想定地震の前提
本レポートでは、以下のような地震を仮定します。
- 震源地:愛知県名古屋市中区三の丸、愛知県庁周辺の地下
- 地震タイプ:内陸の活断層または未知の断層による直下型地震
- 地震規模:マグニチュード6.8から7.3程度
- 震源の深さ:地下5から15キロメートル程度
- 最大震度:震源付近で震度7
- 強い揺れの継続時間:おおむね30秒から1分程度
- 余震:数日から数か月にわたり発生。震度5弱以上の余震が複数回起きる可能性
- 発生時刻の代表例:平日午後2時、平日朝8時、冬季夕方、深夜の4ケース
- 気象条件:冬季・乾燥・強風の場合は都市火災リスクが最大化
愛知県庁周辺は、愛知県警察本部、名古屋市役所、裁判所、国の行政機関、金融機関、企業拠点、地下鉄駅、幹線道路などが集中する地域です。このため、住宅被害だけではなく、県・市・国の災害対応能力そのものが初動から低下する「行政中枢被災型」の災害となる可能性があります。
3. 震度分布と揺れの特徴
震源が愛知県庁の直下または近傍にある場合、中区、東区、北区、西区、千種区、昭和区、熱田区などでは、広い範囲で震度6強から7に達する可能性があります。
特に、震源から近い三の丸、丸の内、泉、白壁、栄、名駅、金山、鶴舞、今池、池下、名古屋城周辺などでは、古い建物や非耐震建築物、天井や外壁、看板、ブロック塀、ガラス面、家具などに大きな被害が出るおそれがあります。
想定される揺れの影響は以下のとおりです。
- 立っていることが難しく、家具や大型家電が移動・転倒する。
- 耐震性の低い木造住宅では、倒壊または大破が発生する。
- 古い中低層の雑居ビル、商店、倉庫、老朽化した集合住宅などで倒壊危険が高まる。
- 高層ビルでは、長周期地震動により上層階で大きな横揺れが起きる。
- エレベーターが緊急停止し、多数の閉じ込めが発生する。
- 天井材、照明、ガラス、外壁タイル、看板などが落下する。
- 地下鉄、地下街、地下駐車場、地下通路で浸水・停電・閉じ込め・避難混乱が生じる。
- 道路上で車両が急停止し、交差点や高架道路周辺で事故が多発する。
- 家庭、飲食店、工場、病院、事業所からの火災が同時多発する。
名古屋市は、建物倒壊、道路閉塞、火災延焼などの危険性を地域ごとに評価しています。内陸直下型地震では、これらのリスクが同時に顕在化し、とくに老朽木造住宅が残る地区や細街路が多い地区で救助・消火が難しくなると考えられます。
4. 津波の想定
4-1. 愛知県庁直下地震では大規模津波の可能性は低い
愛知県庁は名古屋市中心部の内陸側に位置しており、海域を震源とする南海トラフ巨大地震とは性質が異なります。そのため、愛知県庁直下の内陸地震だけを原因として、太平洋沿岸に大規模な津波が発生する可能性は通常低いと考えられます。
大規模津波は一般に、海底の広い範囲が急激に上下変動し、大量の海水が押し上げられることで発生します。内陸の断層活動では、この条件を満たしにくいためです。
したがって、この想定における名古屋市中心部の主要被害は、津波ではなく以下の要因になります。
- 強い地震動
- 建物倒壊
- 火災
- 液状化
- 地下空間の被害
- 河川・運河・港湾部の水位変動
- 交通・通信・電力・上下水道の停止
- 行政・経済中枢機能の混乱
4-2. 津波に代わる「水害リスク」
大規模な海洋津波がなくても、名古屋港、堀川、中川運河、山崎川、庄内川、新堀川などでは、地震による護岸損傷、排水機能停止、高潮時の逆流、船舶の漂流、油流出などの二次災害が発生する可能性があります。
とくに以下の地域では、液状化や堤防・護岸損傷と組み合わさることで浸水リスクが上がります。
- 港区
- 中川区
- 南区
- 熱田区の低地部
- 西区・北区の河川沿い低地
- 名古屋港周辺の臨海工業地帯
- 飛島村、弥富市、蟹江町などのゼロメートル地帯
また、地震発生後に大雨や台風が重なる場合、排水ポンプ場、下水道管、河川堤防、地下街排水設備などが損傷した状態で浸水被害が拡大するおそれがあります。
なお、名古屋市の南海トラフ巨大地震想定では、港区で最大2.4メートル程度の津波が最短96分で到達するケースが示されています。これは今回の内陸直下地震とは別の想定ですが、名古屋港周辺の避難・港湾停止・石油コンビナート対策の重要性を示す情報です。
5. 建物被害と都市火災
5-1. 建物倒壊
愛知県庁直下で震度7が発生した場合、建築年代、構造、耐震改修の有無によって被害に大きな差が出ます。
特に危険性が高いのは、次のような建物です。
- 1981年以前の旧耐震基準で建てられた木造住宅
- 耐震改修されていない古い集合住宅
- 老朽化した店舗併用住宅
- 狭い道路に面した木造密集地区の住宅
- 天井・外壁・設備機器の耐震対策が不十分なビル
- 古い病院、福祉施設、学校、宿泊施設
- 耐震性が不足する工場、倉庫、危険物施設
- 地下構造物や老朽化した上下水道施設
名古屋市中心部には比較的新しい耐震建築物も多い一方、周辺部や商店街、木造住宅地には旧耐震建物も残っています。地震の揺れが局地的に増幅する地盤条件の場所では、新耐震基準の建物であっても内装、設備、配管、エレベーター、窓ガラス、天井などに相当の被害が出る可能性があります。
想定される建物被害の規模は、地震の条件によって大きく変わりますが、名古屋市および周辺自治体で以下の規模に達する可能性があります。
- 全壊・焼失:数万棟規模
- 半壊・大規模半壊:10万棟規模
- 一部損壊:数十万棟規模
- 一時的に居住継続が困難となる世帯:数十万世帯規模
- 避難所・親族宅・ホテル・車中泊などへの避難者:数十万人規模
ただし、これは公式の確定推計値ではなく、震源位置や建物耐震化率などを踏まえた概算的なシナリオです。
5-2. 都市火災
最も深刻な二次災害の一つが火災です。大地震の直後には、以下のような火災原因が同時に生じる可能性があります。
- 家庭用ガス機器、石油ストーブ、調理器具からの出火
- 電気復旧時に発生する通電火災
- 飲食店の厨房設備、フライヤー、ガス配管の破損
- 工場・倉庫の危険物、化学物質、可燃性ガスの漏出
- 自動車事故に伴う燃料漏れ
- 変圧器、配電盤、蓄電池設備、太陽光発電設備からの出火
- 倒壊建物の下敷きになった人の救助遅れによる火災死
冬季の夕方から夜間に発生し、乾燥と強風が重なった場合、火災は急速に延焼するおそれがあります。道路閉塞、消火栓の断水、消防署・消防車両の被災、通信障害が起きると、通常の消防力では同時多発火災に対応しきれない可能性があります。
名古屋市中心部では高層ビルが多いため、木造密集地での延焼とは異なる課題もあります。高層建築物での火災や停電が起きた場合、消防活動、避難誘導、要配慮者の搬送、煙の排出、非常用電源の維持が大きな問題になります。
6. 人的被害と死者数の想定
6-1. 死者数を左右する要因
死者数は地震の規模だけでは決まりません。とくに重要なのは以下の条件です。
- 発生時刻
- 建物倒壊の規模
- 火災件数と風速
- 家庭内の家具固定率
- 旧耐震木造住宅の残存状況
- 通勤・通学者の密集状況
- 地下街・駅・商業施設の利用状況
- 高齢者、障害者、入院患者、乳幼児などの避難支援
- 病院の機能維持
- 救助活動の開始までに要する時間
- 道路閉塞や通信障害の程度
- 余震や降雨、低温などの環境条件
同じ震度7でも、深夜なら通勤客は少ない一方、住宅内で就寝中の人が倒壊家屋の下敷きになる危険が増えます。平日朝なら駅、地下鉄、バスターミナル、オフィス街、学校、商業施設に人が集中し、転倒・落下物・群集事故・帰宅困難者が増えます。冬季夕方は火災リスクが特に高くなります。
6-2. 人的被害のシナリオ別推計
この仮想シナリオでは、名古屋市を中心に愛知県西部の広域で甚大な被害が生じると想定します。
比較的被害が抑えられるケース
耐震化が進んでおり、発生が日中、風が弱く、大規模火災が限定的である場合です。
- 死者:約2,000人から6,000人
- 重傷者:約1万人から3万人
- 軽傷者:約5万人から15万人
- 避難者:約20万人から50万人
- 帰宅困難者:約50万人から100万人
深刻な被害ケース
平日朝または夕方に発生し、建物倒壊、駅・地下街での混乱、複数の火災、救急搬送の停滞が生じるケースです。
- 死者:約8,000人から2万人
- 重傷者:約3万人から8万人
- 軽傷者:約10万人から30万人
- 避難者:約50万人から100万人
- 帰宅困難者:約100万人から200万人
最悪級の被害ケース
冬季夕方、強風、老朽木造住宅の倒壊、都市火災の拡大、電力・水道・道路・通信の広範な停止、医療機能の大幅低下が重なるケースです。
- 死者:約2万人から5万人超
- 重傷者:約8万人から15万人
- 軽傷者:約20万人から50万人
- 長期避難者:約100万人規模
- 在宅避難者を含む生活支援対象者:数百万人規模
この死者数は、愛知県庁直下で大規模な内陸地震が起きた場合のリスクを示すための幅広い想定です。実際の地震被害を予言するものではありません。
死因の内訳としては、概ね以下が想定されます。
- 建物倒壊・家具転倒による圧死、窒息死
- 火災による焼死、一酸化炭素中毒
- 落下物、ブロック塀、看板、外壁などによる死亡
- 交通事故、鉄道・エレベーター事故
- 避難中の転倒、低体温症、持病悪化
- 透析・人工呼吸器・在宅医療の中断
- 救助遅延による死亡
- 災害関連死
直接死だけでなく、避難生活の長期化による災害関連死が数百人から数千人規模で発生する可能性があります。高齢者、障害者、妊産婦、乳幼児、慢性疾患のある人、医療・介護サービスに依存する人ほど影響を受けやすくなります。
7. 行政中枢への影響
愛知県庁周辺が震源となる最大の特徴は、県・市・国の行政機能が近接地域で同時に打撃を受けることです。
愛知県庁、愛知県警察本部、名古屋市役所、国の出先機関、裁判所、消防・警察の指令機能、通信拠点、報道機関、金融機関などが被災すると、災害対応そのものが遅れるおそれがあります。
想定される問題は以下のとおりです。
- 県庁舎・市役所庁舎の損傷、立入制限
- 職員の負傷、家族の被災、参集困難
- 災害対策本部の通信回線・電源の不具合
- 行政文書、住民情報、システム、サーバーへのアクセス不能
- 警察・消防・救急の指令系統の混乱
- 避難所開設、物資配布、罹災証明、給付手続きの遅れ
- 国・県・市・区の役割分担に関する混乱
- 風評や偽情報の拡散による住民不安
- 報道・SNSを通じた情報過多と誤情報の流通
行政庁舎が安全確認のため閉鎖された場合、あらかじめ準備された代替庁舎、衛星通信、クラウド上の業務システム、近隣自治体との相互応援、広域派遣職員の受入体制が極めて重要になります。
8. ライフライン被害
8-1. 電力
地震直後、名古屋市内および愛知県西部で大規模停電が発生する可能性があります。変電所、送電線、配電設備、電柱、地下送電設備、家庭内分電盤などの損傷が原因となります。
想定される影響は以下のとおりです。
- 信号機停止による交通事故・渋滞
- 病院、介護施設、工場、データセンターへの影響
- エレベーター閉じ込め
- 地下鉄駅、地下街、商業施設の照明・換気停止
- 携帯電話基地局の非常用電源枯渇
- 家庭の冷暖房、冷蔵庫、調理、給湯が停止
- 電気自動車の充電不能
- 通電火災の発生
復旧は、都市部の幹線系統で数日、局地的な被害地域では数週間以上かかる可能性があります。倒壊建物、道路閉塞、浸水、火災、余震が復旧作業を妨げます。
8-2. 上下水道
水道管の破損、浄水場の損傷、配水池の機能低下、断水、漏水が広範囲に発生する可能性があります。とくに古い管路や地盤変動の大きい場所で破損が集中するおそれがあります。
断水が起きると、飲料水だけでなく以下の問題が連鎖します。
- トイレが使用できない。
- 消火栓の水圧が低下する。
- 病院や福祉施設の衛生管理が難しくなる。
- 飲食店・食品工場の営業が停止する。
- 避難所の衛生環境が悪化する。
- 感染症、食中毒、脱水症のリスクが高まる。
- マンション上層階への給水が困難になる。
下水道では、管路の破損、マンホール浮上、ポンプ場停止、汚水逆流、浸水時の排水不能が問題になります。大規模断水が続くと、仮設トイレ、携帯トイレ、し尿収集、衛生用品の供給が生命維持と同じくらい重要になります。
8-3. 都市ガス・LPガス
ガス供給は安全装置により停止する可能性があります。広域でガス供給が止まると、復旧には配管の点検、圧力確認、個別訪問、再点火作業が必要となるため、電力より復旧が長引くことがあります。
都市ガス停止は、家庭だけでなく、飲食店、病院、ホテル、学校給食、工場、銭湯、クリーニング業などにも大きく影響します。
8-4. 通信
携帯電話は、地震直後に通信規制や利用集中でつながりにくくなる可能性があります。基地局の停電、回線混雑、設備損傷、光ファイバー断線が重なると、音声通話、データ通信、決済、行政手続き、医療連絡、物流管理に影響が出ます。
特にキャッシュレス決済への依存度が高い都市部では、通信停止が生活機能の停止に直結します。現金、紙の地図、家族間の集合場所、災害用伝言ダイヤル、ラジオ、モバイルバッテリーなど、通信が使えない前提での備えが必要です。
9. 交通・物流への影響
9-1. 鉄道
名古屋駅は東海道新幹線、JR在来線、名鉄、近鉄、名古屋市営地下鉄、あおなみ線、高速バス、タクシーなどが集中する中部圏最大級の交通結節点です。震度6強から7の揺れが名古屋市中心部を襲った場合、各鉄道は緊急停止し、長時間の運転見合わせとなる可能性が高いです。
影響が予想される路線・施設は以下のとおりです。
- 東海道新幹線
- 東海道本線、中央本線、関西本線
- 名鉄名古屋本線、犬山線、常滑線、瀬戸線など
- 近鉄名古屋線
- 名古屋市営地下鉄全線
- あおなみ線
- リニア中央新幹線関連工事区域
- 名古屋駅地下街、地下通路、地下駐車場
- バスターミナル、タクシー乗り場
高架橋、橋脚、トンネル、駅舎、電力設備、信号設備、線路、変電所の点検が必要になるため、仮に大きな損傷が見つからなくても、運転再開まで数時間から数日を要することがあります。
地下鉄では、駅構内の天井材、照明、案内板、エスカレーター、ホームドア、排水設備、非常用電源の状態確認が不可欠です。地下街と接続する駅では、停電や避難誘導の混乱が起きやすくなります。
9-2. 道路
名古屋高速、名古屋第二環状自動車道、東名高速道路、名神高速道路、伊勢湾岸自動車道、国道1号、国道19号、国道22号、国道23号、国道41号などが被害を受けると、中部圏の物流全体が大きく停滞します。
道路では以下の被害が想定されます。
- 高架橋・橋脚・ジョイント部の損傷
- 路面陥没、亀裂、段差
- 電柱、看板、外壁、倒壊家屋による道路閉塞
- 信号停止
- 自動車事故の多発
- 緊急車両の通行妨害
- ガソリンスタンドの営業停止
- 駐車場や立体駐車場の損傷
- 放置車両、渋滞、燃料切れ車両の増加
救命活動では、道路を一般車両から確保し、消防・救急・警察・自衛隊・医療支援チーム・物資輸送車両を優先通行させる必要があります。
9-3. 港湾・空港・物流拠点
名古屋港は日本有数の国際貿易港であり、自動車、機械、鉄鋼、化学製品、コンテナ貨物、エネルギー資源などを扱っています。地震により岸壁、クレーン、倉庫、コンテナヤード、道路、燃料タンク、荷役機械が損傷すると、輸出入と国内物流が長期間停滞する可能性があります。
中部国際空港も、空港施設、アクセス鉄道、高速道路、燃料供給、通信設備などの点検・復旧状況によっては利用制限を受けます。一方で、空港は救援物資、人員輸送、広域医療搬送の拠点として重要になるため、早期復旧が求められます。
10. 経済被害と経済損失
10-1. 経済被害の考え方
経済被害は、建物や設備が壊れる「直接被害」と、操業停止、売上減少、物流停止、雇用減少、観光客減少などによる「間接被害」に分けられます。
愛知県は自動車産業を中心に、輸送機械、部品製造、航空宇宙、工作機械、電子部品、化学、食品、港湾物流、商業、金融、観光、情報通信などが集積する地域です。そのため、名古屋市中心部の被災は地域内だけでなく、日本全国、海外のサプライチェーンにも波及します。
10-2. 直接被害
直接被害には、以下が含まれます。
- 住宅、マンション、店舗、オフィス、工場、倉庫の倒壊・損傷
- 公共施設、学校、病院、庁舎の損傷
- 鉄道、道路、橋梁、港湾、空港、上下水道、電力設備の復旧費
- 工場設備、工作機械、在庫、原材料、完成品の損失
- 商業施設、ホテル、飲食店、観光施設の損傷
- 火災、浸水、液状化、危険物漏出による損害
- 文化財、歴史的建造物、資料、地域資産の損失
愛知県庁直下の震度7地震で名古屋市を中心に甚大な被害が出た場合、直接被害は10兆円から25兆円程度に達する可能性があります。これは、被害が名古屋市中心部に集中するケースから、愛知県西部・尾張地域・知多地域・西三河の一部まで広域化するケースを含む概算です。
10-3. 間接被害
間接被害は、直接被害より長期間に及ぶ可能性があります。
- 製造業の操業停止
- 部品不足による国内外の工場停止
- 港湾物流の停滞
- 鉄道・道路停止による通勤困難
- 店舗休業、消費低迷
- 事務所移転、企業活動の縮小
- 観光・イベント・展示会の中止
- 金融・保険・不動産取引の停滞
- 学校休校、保育機能低下による労働力減少
- 住宅再建・仮設住宅建設の長期化
- 風評被害、投資延期、企業の県外移転
- 災害復興需要による資材・人材不足、建設費高騰
間接被害まで含めた経済損失は、発災から数年間で20兆円から50兆円程度に達する可能性があります。最悪の場合、復旧・復興が長期化し、実質的な地域総生産の減少、企業の生産拠点再編、人口流出、税収減少を通じて10年以上影響が残る可能性があります。
10-4. 自動車産業への影響
愛知県は自動車産業の集積地であり、完成車メーカーだけでなく、数千社規模の部品メーカー、金型、工作機械、物流、港湾、販売、整備、研究開発拠点が相互に結びついています。
大地震による影響は、単に工場が壊れることにとどまりません。
- 本社・営業・設計・調達・金融機能の停止
- 部品メーカーの操業停止
- 在庫・配送センターの機能低下
- 港湾からの輸出入停止
- 道路・鉄道障害による部品輸送遅延
- 従業員の被災、出勤困難、保育・介護問題
- 半導体、電子部品、樹脂、鋼材などの調達難
- 国内外の組立工場への波及
- 生産再開後の需要減少、販売網混乱
現代の製造業は在庫を最小化する「ジャストインタイム」型の供給網を採用しているため、1社の部品供給停止が多数の工場停止につながることがあります。被災地域外の企業でも、生産調整、納期遅延、輸出減少が起きる可能性があります。
10-5. 中小企業・商店街への影響
大企業と比べ、中小企業は建物、設備、運転資金、人員、取引先が一つでも失われると、再建が難しくなりやすい傾向があります。
特に影響を受けやすい業種は以下です。
- 飲食店
- 小売店
- 理美容業
- クリーニング業
- 印刷業
- 建設業
- 運送業
- 町工場
- 旅館・ホテル
- 医療・介護事業者
- 保育・教育事業者
- 観光・イベント関連事業者
店舗兼住宅が被災した場合、住まいと生計手段を同時に失うことになります。事業再建には、迅速な被災証明、資金繰り支援、雇用維持支援、仮設店舗、事業用物件の確保、地域商店街の再生支援が必要です。
11. 医療・福祉への影響
大地震後、医療需要は急増する一方、病院側も建物被害、停電、断水、職員不足、医薬品不足、通信障害に直面します。
想定される医療上の問題は以下のとおりです。
- 外傷患者が救急病院に集中する。
- 手術室、人工透析、集中治療室の電源確保が課題になる。
- エレベーター停止により患者搬送が困難になる。
- 断水で手術、透析、感染管理、トイレが制約される。
- 救急車が渋滞・道路閉塞で到着できない。
- 医師、看護師、介護士、薬剤師が参集できない。
- 医薬品、酸素、血液、医療材料の補給が途絶える。
- 高齢者施設や障害者施設で避難支援が追いつかない。
- 在宅人工呼吸器、インスリン、透析、在宅酸素などが中断する。
- 避難所で感染症、熱中症、低体温症、深部静脈血栓症が増える。
名古屋市内の基幹病院は広域医療の要ですが、被災直後には通常診療を縮小し、重症者中心の対応に切り替える必要が生じます。軽症者は救護所や地域の医療機関へ誘導する「トリアージ」が不可欠になります。
12. 地下空間・高層建築物への影響
名古屋市都心部では、地下鉄、地下街、地下駐車場、地下通路、地下商業施設、共同溝、地下設備などが広がっています。地下空間は、地上の火災や落下物から一時的に守られる面もありますが、停電、浸水、煙、閉じ込め、避難方向の混乱が生じると危険です。
とくに名古屋駅、栄、伏見、久屋大通、金山などの地下空間では、以下が課題になります。
- 照明停止による視界不良
- 通信障害
- エスカレーター停止
- 人流の集中による将棋倒し
- 排水設備停止による浸水
- 火災の煙の流入
- 案内表示の機能低下
- 地上出口の閉塞
- 要配慮者の避難支援
高層建築物では、建物が倒壊しなくても、長周期地震動によって上層階が大きく揺れます。オフィス家具、書棚、複合機、サーバーラック、天井材、照明、ガラスなどが損傷し、業務再開が難しくなる場合があります。
13. 発災後の時間経過別シナリオ
発災直後から3時間
- 建物倒壊、家具転倒、火災、停電、断水が発生。
- 鉄道・地下鉄・新幹線が緊急停止。
- 名古屋駅、栄、金山などで大量の滞留者が発生。
- 携帯電話の通話がつながりにくくなる。
- 消防・警察・救急への通報が殺到。
- 愛知県庁、名古屋市役所、警察本部などで被害確認と災害対策本部設置が行われる。
- 道路閉塞と信号停止で救急車両が進めない。
- SNS上で誤情報、デマ、安否不明情報が拡散する。
発災後3時間から24時間
- 火災が拡大し、消火活動が本格化。
- 倒壊家屋・ビルからの救助活動が始まる。
- 避難所が開設されるが、収容人数を超える可能性がある。
- 帰宅困難者が駅周辺・公園・公共施設に滞留する。
- 病院が患者であふれ、重症者の広域搬送が検討される。
- 飲料水、食料、毛布、簡易トイレ、医薬品が不足し始める。
- 余震への恐怖から屋外・車中で過ごす人が増える。
- 港湾、空港、高速道路、鉄道の被害状況が順次明らかになる。
発災後2日から1週間
- 自衛隊、警察、消防、DMAT、広域応援部隊が本格展開する。
- 断水地域で給水所が設置される。
- 避難所の衛生、食事、トイレ、プライバシー、要配慮者支援が課題となる。
- 災害関連死のリスクが高まる。
- 店舗の在庫不足、物流停滞、燃料不足が顕在化する。
- 学校、企業、行政サービスの休止が続く。
- 建物危険度判定が行われ、立入禁止区域が設定される。
- 犯罪抑止、治安維持、空き巣・詐欺対策が必要になる。
発災後1週間から1か月
- 一部の鉄道、道路、電力、通信が段階的に復旧する。
- 仮設住宅やみなし仮設住宅の確保が始まる。
- 被災企業の再開・廃業判断が進む。
- 被災証明、保険、融資、雇用支援などの行政需要が急増する。
- 住宅再建をめぐる資材不足・人手不足・価格上昇が起きる。
- 避難所から二次避難所、ホテル、親族宅、仮設住宅への移動が始まる。
- 地域によっては学校再開が進むが、教職員・校舎・給食・通学路の問題が残る。
発災後数か月から数年
- 都市再建、復興区画整理、耐震化、インフラ更新が本格化する。
- 被災者の生活再建格差が広がる。
- 中小企業の廃業、雇用流出、人口減少が課題になる。
- 企業のBCP見直しや拠点分散が進む。
- 復興需要が地域経済を支える一方、建設人材不足・資材高騰が続く。
- 心的外傷後ストレス障害、孤立、生活習慣病、介護負担など長期的な健康問題が生じる。
14. 環境・危険物・二次災害
名古屋市および周辺地域では、住宅地、商業地、工業地、港湾施設が近接しています。このため、地震後には環境面で以下の問題が起こる可能性があります。
- 石油・化学物質の流出
- 工場からの有害物質漏出
- アスベスト飛散
- がれきの大量発生
- 下水処理施設の停止による水質悪化
- 河川・運河・港湾への油流出
- 廃棄物処理能力の不足
- 火災による大気汚染
- 倒壊建物からの粉じん
- 液状化に伴う地盤沈下・配管破断
- 災害廃棄物の不法投棄や仮置場不足
名古屋港周辺には石油・化学関連施設、倉庫、コンテナターミナルなどがあり、火災・爆発・有害物質漏出を防ぐためには、施設ごとの緊急遮断、消防活動、海上保安、環境監視が必要です。
15. 被害を小さくするための重要対策
15-1. 行政・企業の対策
- 県庁、市役所、警察、消防、病院の代替拠点を確保する。
- 行政データと業務システムを複数地域へ分散する。
- 非常用発電機、燃料、水、衛星通信、可搬式通信機器を整備する。
- 職員の参集計画を複数パターンで準備する。
- 企業は本社機能、サーバー、調達先、物流拠点を分散する。
- サプライヤーの被災状況を迅速に把握できる仕組みを整える。
- 帰宅困難者を受け入れる一時滞在施設を増やす。
- 地下街・高層ビルでの避難誘導訓練を定期的に行う。
- 災害時でも使える現金、紙の名簿、無線、衛星電話を用意する。
15-2. 住民の対策
- 家具を固定する。
- 寝室に大型家具を置かない。
- 感震ブレーカーを設置する。
- 水、食料、携帯トイレ、モバイルバッテリー、常備薬を最低でも1週間分備蓄する。
- 家族の安否確認方法と集合場所を決める。
- 自宅、勤務先、学校周辺の避難所と危険箇所を確認する。
- マンション居住者は停電・断水・エレベーター停止を前提に備える。
- 車の燃料を半分以上保つ。
- 地震後はブレーカー、ガス、火気を確認し、通電火災を防ぐ。
- 自宅が安全なら、無理に避難所へ行かず在宅避難を選ぶ。
- デマを拡散せず、自治体・気象庁・消防・警察などの公式情報を確認する。
16. 総括
愛知県庁直下を震源とする震度7以上の内陸直下型地震が発生した場合、名古屋市は単に「大きく揺れる」だけでは済みません。
最も重大なのは、以下の被害が同時に発生することです。
- 県・市の行政中枢機能の被災
- 建物倒壊と都市火災
- 多数の死傷者と避難者の発生
- 名古屋駅・地下鉄・道路網の停止
- 電力・水道・ガス・通信の長期障害
- 名古屋港、製造業、物流網の機能低下
- 自動車産業をはじめとする全国規模の供給網への波及
- 医療・介護・福祉機能のひっ迫
- 住宅再建と地域経済再生の長期化
津波については、愛知県庁直下の内陸地震単独では大規模な海洋津波の可能性は低いと考えられます。しかし、港湾部・低地・河川沿いでは、液状化、護岸損傷、排水停止、高潮、運河・河川の水位変動などに注意が必要です。
経済損失は、建物やインフラの直接被害だけでも10兆円から25兆円程度、操業停止や物流停滞、企業活動の縮小、雇用・消費・投資への影響を含めると、数年間で20兆円から50兆円程度に拡大する可能性があります。これは愛知県だけの問題ではなく、日本の製造業、輸出、物流、金融、雇用に広く影響する国家的な災害となり得ます。
一方で、耐震化、家具固定、感震ブレーカー、備蓄、代替拠点、行政機能の分散、企業の事業継続計画、地下空間の避難対策、地域の助け合いを事前に積み重ねることで、死者数と復旧期間は大きく減らせます。
愛知県は2026年6月に南海トラフ地震被害予測調査結果を公表し、最新データに基づく震度、津波、建物被害、死者数などの想定を示しています。また、同月には最大クラスの津波を対象とする津波浸水想定も変更・公表しています。内陸直下地震への備えとあわせて、各家庭・企業・自治体が地域の最新ハザード情報を確認し、複合災害を前提に備えることが重要です。
防災関連情報

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今日にも来るかもしれない津波に備え、自宅に家族分、自家用車に乗車人分、職場にも人数分のライフジャケットを用意しておきましょう!
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※高い標高を基準とした防災移住のご参考に。標高60メートル以上(理想は100メートル以上)を推奨します。候補地は奈良県、京都府、兵庫県、岡山県、群馬県、埼玉県(大宮、所沢)です。地盤の強さも確認し、候補地の周りに豪雨による土砂崩れ、河川の氾濫による浸水の恐れが無いかも確認してください。
極地の氷が解けると日本も水没しちゃうってホント? GX入門/身近な疑問vs東大
標高・地盤認知の推奨
ステップ1
あなたの勤務先やお住まいの住所から標高を知りましょう!
↓ ↓ ↓
地理院地図 / GSI Maps|国土地理院のサイトの検索窓に住所を入れると標高がサイトの左下に表示されます。
移転予定先の標高も調査しておきましょう!
※標高は100m以上推奨です。(備えあれば憂いなし!)
ステップ2
あなたの勤務先やお住まいの住所から地盤の状態を知りましょう!
↓ ↓ ↓
地盤の状態は地盤サポートマップ【ジャパンホームシールド株式会社】のサイトで知ることができます。
移転予定先の地盤状態も調査しておきましょう!
ステップ3
地震による津波や温暖化による氷河融解による水位上昇をシミュレーションしましょう!
海面上昇シミュレーター | JAXA Earth Appsのサイトで水位が上昇した場合のシミュレーションが可能です。希望の地区へカーソルで移動してください。
縄文時代は今よりも120m水位が高かったようです。縄文海進(Wikipedia) とは?
防災認知ソース
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